――8月には「全国ツアー「KAORI PARADISE 2017 HAPPY 50th ANNIVERSARY ぶらりひとり旅」が開催されます。岸谷さんがひとりで回るツアーは昨年も行われましたが、今年はどんな内容になりそうですか?

ひとりのライブって、やればやるほど熟してくるんです。もちろん「今日のライブがベスト」という気持ちで臨むんだけど、ステージを重ねるたびに良くなるし、同じ曲であっても、表現が変わってくるんですよね。

初めてやったひとりのライブは2014年のビルボードライブ東京だったんですけど、いま振り返ってみると、まだまだ熟してなかったなって。

去年のツアーに来てくださった方にも、ぜひ今年のツアーを観てほしいです。絶対、去年よりも良いパフォーマンスをお見せするので。

――ひとりライブではピアノ、ギター、ベースなどの楽器も演奏しますが、楽器に対する興味も深まっていますか?

そうですね。楽器ってね、演奏しているうちに「ここが出来ない」って気付くんですよ。「なるほど、これが出来ないから上手くいかないんだ。じゃあ練習するしかないな」って。

もっと下手なときは、何が出来てないかもわからないから。そうやって階段を一段一段上がるように練習するんだけど、1年くらい経つと身近な人から「すごく良くなった」と言われることもあって。

そうやって成長できるのも楽しいんですよね。

――楽曲に対する解釈も変わってきそうですね。

楽曲って育つものだし、「じつはこういう曲だったんだ」って思うことも多いですからね。

この前、セントラルパークで歌う機会(5月14日にニューヨーク・セントラルパーク内で行われた「JAPAN DAY@セントラルパーク2017」)があったんですけど、そのときは珍しくプリプリ(PRINCESS PRINCESS)の曲だけでステージを構成したんです。

ふだんは新しい曲と昔の曲で組み立てるんだけど、そのときは日本の文化を紹介するためのイベントだったし、お客さんも私と同年代の方が多かったから「日本で過ごした青春時代の頃の曲を歌ったほうが、グッと来るだろうな」と思って。

その日、私自身がいちばん感動したのは「パパ」だったんです。娘がお父さんに「会わせたい人がいる」と伝える歌なんだけど、以前は娘の立場になって歌っていたのに、いまは娘と父の話をキッチンで聞いている母親の立場になってたんですよね。

「そうか、歌ってこういうふうに育っていくんだな」って感激しちゃって。そういう経験をさせてもらえたことも嬉しいし、若いときに作った曲がちゃんと残っていることもありがたいですよね。

――過去の楽曲を現在の感情で捉え直して、新しい表現に結び付けているわけですね。

そうですね。プリプリの再結成も大きかったと思うんです。あのときにプリプリの曲を歌えたからこそ、ひとりで歌う意味もあるんじゃないかなって。そう思うと、なおさらきちんと歌わないといけないですよね。

――今年の夏は「情熱大陸ライブ2017」「MONSTER baSH 2017」「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO」などのフェスにも出演。ここでも“現在進行形の岸谷香”のスタイルが体感できそうですね。

フェスに出演させてもらったのも再結成してからなんですけど――80年代にはフェスなんてなかったから――ひとりでやることで、また違う表現を観てもらえると思いますね。それも私にとってはすごく意味があるチャレンジなんですよ。