『僕らはみんな河合荘』の河合律

人間関係というものを複雑に考え過ぎてしまうが故に、コミュニケーションに消極的になっているいるヒロイン、それが『僕らはみんな河合荘』の河合律です。

強烈なキャラクターを持つ住人ばかりが集まる下宿「河合荘」を舞台に、ストーリーが展開される本作。律は、この物語の主人公である男子高校生、宇佐和成にとって憧れのマドンナであり、同じ下宿で暮らす同居人でもあります。

容姿端麗、学業優秀、まさに「知的美人」を地で行く律ですが、その一方で、対人関係に対しては慎重かつ煩雑に物事を捉えてしまう為、校内には友人らしい友人もおらずいつも一人で大好きな読書に没頭しているというキャラクターです。

そんな彼女に付いた通称が「プロぼっち」。無表情かつ言葉数も少なめな言動も手伝って、なかなか他者との距離を詰められない、寧ろ、その距離を遠ざけることで安寧を感じるタイプなのです。

物語のメインは、宇佐くんと律という男女二人が織り成すピュアで淡いロマンスであり、そこに、個性的な河合荘の住人たちが繰り広げるコメディやサブキャラクターによる恋愛描写が彩りを加えます。

対人関係に対して悩みと、ある種の達観による諦念を併せ持つ律のキャラクター描写は、人見知りをしてしまう人であれば、その不器用さを大いに共有できるかと思います。

そんな彼女に対して、宇佐くんは心の距離を少しずつ少しずつ、ゆっくりと近付けていくのですが、あくまで彼女の考え方を尊重し、その価値観に自分の合わせつつ適切な距離を模索していきます。律の人間関係不得意っぷりを矯正しようとするのではなく、それも個性だと捉え、時に失敗しながらも徐々に彼女のことを理解し、その歩みを揃えていく。

その肯定的なヒューマニズムは、何とも優しい目線に満ちており、胸に温かいものを残してくれます。

『僕らはみんな河合荘』は、原作漫画も勿論素晴らしいのですが、劇中で多用されるカラフルでポップな演出や主題歌と劇伴の素晴らしさ、出演声優さんのキャラクターへのハマりっぷりなど、アニメでも多くの見どころがある為、今回はアニメ版をチョイスさせていただきました。オススメ作です。

『くまみこ』の雨宿まち

『くまみこ』の主人公である雨宮まちは、東北部の過疎地域に暮らす女子中学生。人語を話すことができる熊を祀る神社に仕える巫女で、幼い頃からヒグマのナツと共に育ってきた女の娘です。

地方に住んでいる年頃の女の娘らしく都会への憧憬を募らせているのですが、「限界集落」とまで呼ばれるド田舎暮らしのせいで、幼少期から人と接する機会が少なかった為に、見知らぬ人とコミュニケーションを取るのが不得意という最大の弱点を抱えています。

しかも、電化製品やデジモノに対しても大の苦手意識があり、人見知りをし過ぎる性格と相まって、凄まじい田舎コンプレックスを拗らせることに……。大勢の人や都会的な文化を前にすると一種のパニック状態になってしまい、それがトラウマになって、他人や都会に対する恐怖感が更に増長するという負のスパイラルに陥っているのです。

漫画の中では、そんなデリケートなまちと、良い意味でも悪い意味でもデリカシーが皆無な村人たちとのやり取りがユーモアと共に描かれます。

可愛らしい絵柄でコーティングされているものの、自意識過剰で対人恐怖症気味なまちのキャラクターは、繊細な心の持ち主であれば、「あるある」と心の中で頷いてしまうことでしょう。

こちらも、ちょっぴりブラックなユーモアを求めている方に推薦したい漫画です。