『新・幕末純情伝』舞台より 『新・幕末純情伝』舞台より

2010年7月に惜しまれながらこの世を去った、戦後を代表する劇作家・つかこうへい。その三回忌特別公演として、つか作品の中でも疾走感と瑞々しさで多くのファンに愛されている『新・幕末純情伝』を上演する。沖田総司が実は女だったというユニークな設定ながら、男女の愛に日本という国家を重ねて描く名作。これまで広末涼子や石原さとみら名だたる女優が大きく羽ばたくきっかけとなった沖田役に挑むのは、これが初舞台の桐谷美玲だ。共演は、北区つかこうへい劇団の一期生で近年はTVドラマでも注目を集める神尾佑が坂本龍馬を演じるほか、鎌刈健太や和田正人ら若手実力派も顔をそろえる。初日を前にした7月11日、東京・シアターコクーンにて会見と公開稽古が行われた。

『新・幕末純情伝』チケット情報

つか作品ならではの、稽古着そのままのようなジャージの衣裳に身を包み、桐谷と神尾、鎌刈、和田、そしてオネエの双子の隊士として出演する広海深海、演出の岡村俊一が会見に応じた。桐谷は「不安もありますが、キャストやスタッフ皆と一生懸命に作り上げたものなので、その結果を全力でお見せしたい」ときっぱり。鎌刈が「美玲ちゃんがタフなので、俺らも頑張らないと!って思えた」と話すと、和田も「初舞台とは思えないほど堂々としている」と絶賛。キャストが着ている“新・幕末純情伝Tシャツ”は広海深海が作ったなどチームワークを感じさせるエピソードも次々に語られた。一方で「つか作品は難解に見えて、実は純粋なラブストーリーが多い。この作品もそのひとつなんです」と神尾が語ると、キャスト陣が真剣な表情になるひと幕も。演出の岡村は「初演(1989年)の熱気と遜色ないほどの仕上がり。美しい新人女優がいて、その周りにアツい男たちがいてという、本作ならではの魅力を楽しんでほしい」と本番に向けて太鼓判を押した。

公開稽古では、総司が土方歳三(鎌刈)ら新撰組に出会うシーンと、物語の終盤、愛する龍馬を殺して叫ぶ総司のシーンが披露された。J-POPに乗せて歌い踊る隊士たちのコミカルな場面から一転、龍馬との絡みではみるみる総司という役に没入してゆく桐谷。「国とは女のことぜよ。日本とは、おまんの美しさのことぜよ」から始まる有名なセリフを熱く、同時にどこか寂しそうな表情で発する神尾演じる龍馬に引き込まれる。そんな龍馬を見つめる桐谷の大きな瞳に涙があふれ、総司が心情を爆発させる次のシーンへとなだれ込んでいった。全身で感情を表す女優・桐谷の誕生に、本番への期待が否応なく高まった。

公演は7月12日(木)から7月22日(日)までシアターコクーンにて上演。チケットは発売中。

取材・文:佐藤さくら