日々野氏が補足してくれた。

「あのPKの時、私は、ピッチで日本チームの選手たちの表情を追っていたんですね。もう少しで世界一に手が届くという場面で、いくら大舞台に立てたこと自体を喜んでる彼女たちとはいえ、緊張しないはずもない。事実、彼女たちの表情もある瞬間までは笑顔なんてなかったんです。では、なぜ彼女たちは笑えたのか? そのキッカケを作ったのが、佐々木則夫監督の『ここまでこれただけでもうけもんだろ! 楽しんでこい!』という言葉でした。監督のひとことで、ふっと花が咲いたように彼女たちに笑顔が浮かんでいったんです。すごいな、言葉の力って。そう感じました。その試合では、PKとなる前の段階でも、アメリカに先取点を奪われたあと、『やっぱりだめだ』と心が折れかけた選手もいたんですね。でも、キャプテンである澤選手の『絶対に大丈夫だから!』のひとことで、『そっか。まだいけるんだ』とチームが前を向けたのですから」

興味深いのは、世界一に輝いたなでしこジャパンの面々も、プレッシャーやネガティブな感情を一切抱かなかったわけではないということ。逆説的に言うならば、監督やキャプテンの言葉がなかったのなら栄冠はつかめなかったのかもしれないし、それ以前に「各人が自らに課した死ぬほど豊富な練習量」(日々野氏)がなかったのなら、いくら説得力のある言葉を贈られても前を向くことすらできなかったのかもしれない。

なるほど。だからこそ、ひねくれ者の僕でさえ、あの試合では素直に拳を突き上げるほど感動してしまったのだろう。

さて、7月26日より、ロンドンオリンピックが開催される。日々野氏は「プレッシャーという意味でいうなら、この五輪こそ、なでしこの真価が問われるはず」と意味深な言葉を口にした。

「先述した決勝戦のアメリカチームのPKが象徴しているのですが、追う者よりも追われる者のほうがプレッシャーを受けるのは勝負の世界では当然のこと。世界一のチームは徹底的にマークされ研究されます。実際、6月21日のアメリカとの親善試合では4対1と大敗を喫してもいます。でも、だからこそ私は楽しみでなりません。なでしこジャパンのみんなが、このプレッシャーに勝つことができるのかどうかが……」

なでしこジャパン×プレッシャー。
日本女子サッカー代表が、五輪で記録した最高位は北京オリンピックの4位。メダル獲得はいまだ一度もない。

英国の地で、なでしこたちはプレッシャーに打ち勝つのか? 
「プレッシャー世代」の13人は、プレッシャーに強いことを証明するのか?
選手たちに笑顔や希望を灯す、魔法の言葉は生まれるのか?
そんな視点で観るのなら、オリンピックの楽しみ方がまたひとつ増えるはずだ。「バブル世代」だ「プレッシャー世代」だの、ジェネレーションの壁をあっさりと越えて。


日々野真理

三重県出身。フリーアナウンサー。武蔵野女子大学短期大学部英文科卒業後アメリカに留学。スカパー!などでサッカー番組の司会やJリーグのピッチリポーターとして活躍。また女子サッカーの取材も精力的に行なっており、なでしこジャパンのオリンピックやワールドカップなどの海外の大会に多数同行。中国大会・ドイツ大会ではではフジテレビのリポーター、インタビュアーとして現地取材を行った。 

 

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ロンドン五輪の期待の星、北島康介がプレッシャーに強い理由[http://ure.pia.co.jp/articles/-/7284]

からさわ・かずや 1967年、愛知県生まれのバブル世代。エンタメを中心にインタビューライターとして活躍中。主な著書に『マイク一本、一千万』(ぴあ)、インタビューを担当した『爆笑問題太田光自伝』(小学館)などがある。

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