左からトニー・ヤズベック、米倉涼子、アムラ=フェイ・ライト 左からトニー・ヤズベック、米倉涼子、アムラ=フェイ・ライト

ショービジネスの聖地ニューヨーク・ブロードウェイで、女優・米倉涼子が現地時間の7月10日(日本時間の翌11日)、ミュージカル『シカゴ』の主役ロキシー・ハート役で主演デビューを飾った。日本人女優のブロードウェイ主演は、『フラワー・ドラム・ソング』のナンシー梅木以来54年ぶりの歴史的快挙。終演後、米倉と、共演のアムラ=フェイ・ライト、トニー・ヤズベックが囲み取材に応じた。

ブロードウェイミュージカル「CHICAGO」チケット情報

ミュージカル『シカゴ』は、ブロードウェイの鬼才ボブ・フォッシーによる演出・振付で1975年に初演、1996年に開幕した再演版は現在ロングラン16年目に突入した大ヒット作。禁酒法時代のシカゴを舞台に、愛人や夫を殺害した罪で起訴されたふたりの悪女、ロキシー(米倉)とヴェルマ(ライト)が、敏腕弁護士ビリー(ヤズベック)の手を借りて一躍マスコミの寵児となっていくさまをシニカルかつユーモラスに描く。

日本版『シカゴ』(2008年、2010年)でも同役で主演を務めた米倉は、今回のブロードウェイデビューに当たって英語を猛特訓。演出家が彼女仕様に特別にチョイスした短い日本語のせりふ1~2つを除き、すべて英語のせりふと歌でパフォーマンスを完遂した。

マスコミや世間を手玉に取り、夢に見るスターの座を手に入れようとするロキシーに扮する米倉は、コケティッシュな愛らしさと転んでもただでは起きない不屈の精神で周囲を虜にしていくキャラクターそのもの。くるくると豊かに変化する表情や、大舞台での計り知れない緊張感さえもエネルギーに代える圧巻の舞台度胸で観客を魅了した。日本で経験済みの役柄とあって、水を得た魚のように楽しんで演技していたのも印象的だ。

気になる英語だが、日本人訛りは当然残りつつ、若干聞き取りにくい箇所もあったとはいえ、英語での演技が初挑戦とは思えないほど、見事なせりふ回しとこなれた発音を披露。ほんの一瞬言い回しに詰まった以外は、2時間半の舞台全編で流れるようなパフォーマンスを見せた。英語の歌も素晴らしい表現力で、デビュー公演としては100点満点と言えるのではないか。

囲み取材での米倉は、「今でも手の震えが止まらないほど緊張しましたが、同時にすっごく楽しかった。稽古は苦労の連続でしたが、これぞ生きている証だと思えた。(共演の)アムラがいなかったら、この舞台をやり遂げる勇気も、ここまで来ようと思うチャレンジ精神も持てなかったはず。キャスト・スタッフ全員が本当に温かく迎えてくれて最高に幸せです」と、時折涙で声をつまらせながら、笑顔で初日の感動を打ち明けた。

ニューヨークのアンバサダー劇場での主演は7月15日(日)まで。その後、8月30日(木)から9月16日(日)まで日本凱旋公演として、米倉、ライト、ヤズベックの主演3人とアメリカ版ツアーカンパニーが東京・赤坂ACTシアターで来日公演を行う。チケットは発売中。

取材・文:武次光世(Gene & Fred)