市川染五郎  撮影:阿部章仁 市川染五郎  撮影:阿部章仁

歌舞伎俳優の市川染五郎(松本錦升)が日本舞踊協会主催の新シリーズ、未来座『賽 SAI』(6月15日~18日、東京・国立劇場小劇場)について意気込みを語った。

未来座『賽 SAI』チケット情報

日本舞踊松本流の家元で、協会の理事でもある染五郎は未来座を立ち上げた理由についてこう話す。「日本舞踊には色々な流派があるんですが、もともと交流がなかったところを曽祖父(七世松本幸四郎)の代に、流派の垣根を超えて一緒に踊る場を設けましょうとして作られたのが日本舞踊協会なんです。古典の継承と新作、このふたつを活動の柱とし、新しい日本舞踊の創作を目指して未来座を作りました」

シリーズのタイトル“SAI”の意味について尋ねると「第一回目は賽子(サイコロ)の“賽”という字を当てましたが、その時のテーマによって、いろどりの“彩”や才能の“才”の字を当てていこうと思っています」と教えてくれた。日本舞踊は歌詞の意味を振りで表現する“当て振り”が基本だが、このタイトルにはそうした常識や既成の枠を超えたいという思いが重なってみえる。

“新しい踊り”については現在も模索している最中だというが、先日、国立代々木競技場で行われた歌舞伎とフィギュアスケートを融合したアイスショー『氷艶』で演出をした際のこんなエピソードを明かしてくれた。「はじめは『道成寺』と『二人椀久』と『連獅子』を繋げた邦楽の曲を作って、髙橋大輔さんにスケート靴を履かずに歌舞伎の衣裳を着て踊ってください、と大枠だけ決めて振付師にお願いしたんです。そうしたら“これはヒップホップだね”という話になって、自分では全く想像してなかったものが出来上がってきた。聞き慣れた曲だけれども、イメージに無かった踊り。こういう発想が面白いなって思いましたね。リズムに合わせて体を動かす、それが舞踊の面白さであり、日本舞踊の多様さなんだと改めて感じました。未来座は、そういう自由な発想ができる場にしたいんです」

その未来座『賽 SAI』では「擽-くすぐり-」の演出と振付を担当する。「今回は“水”の過去、現在、未来がテーマで「擽」は未来のパートになります。水の未来について考えると、役割はどうなるのかなどと考えがちですが、突き詰めると過去から未来まで変わらず存在するものですから、何を表しているかではなく、人のエネルギーそのものを感じてもらえたら。考えなくても楽しめる、わからないところが面白い、そんな自分でも見たことがない作品を作ってみたいですね」。

日本舞踊の新たな第一歩となる新作公演がどんな舞台になるのか、ぜひ劇場で確かめて欲しい。公演は6月15日(木)から18日(日)まで東京・国立劇場 小劇場にて上演。チケット発売中。