『サルベージ・マイス』

先月22日から『サルベージ・マイス』が広島県で、『ラーメン侍』が九州で公開されている。両作はいずれも上映劇場を限定して劇場公開される“地域密着”映画で、ティ・ジョイが配給を手がけている。デジタルをキーワードに自ら劇場を運営し、興行展開するティ・ジョイはローカル映画の現状と未来をどのように考えているのだろうか? ティ・ジョイのエンタテインメント事業部の紀伊宗之氏に話を聞いた。

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全国にデジタル・シネマ上映設備を備えた劇場をもつティ・ジョイは2006年に『佐賀のがばいばあちゃん』をヒットさせて以降、多くのローカル映画を手がけてきた。紀伊氏は「地方発の映画は“地産地消”。だから、現地で産んで現地で資金回収する方法を考えなければならないと思う」という。「地元の人は、東京や大阪でやってくれというんですけど、やればやっただけ赤字になるのであれば、地産地消を徹底的にやるのが先。地元の人たちは熱意はあるけど、ビジネスモデルや資金回収は考えていないことが多いんです。でも、資金が回収できたら次の映画をつくることができる。だからやる以上は戦略的にやりたいと思っています」。

そんなローカル映画が、さらに規模を拡大する突破口。それは“東京”や“日本全国”ではなく“海外”だ。「前に手がけた『KG』や『サルベージ』で最初に決めたのは“アクション映画にする”ということ。それは、海外に売るためですよね。そこにご当地映画を組みあわせることで、地域の人はご当地だから観てくれる。海外の人は日本の武道を基にしたアクション映画だから観てくれるわけです。だから海外市場が見込めれば、東京を経由しなくてもローカル映画の予算は上げられるでしょうし、世界の市場が日本に何を望んでいるのかを明快に理解できれば、日本のどの都市でもローカル映画はできると思います」。

デジタルを活用しながらも地元で“顔の見える宣伝”を展開するローカル映画は海外市場も含め、これまで映画を観に来なかった“新しい観客の掘り起こし”効果もあるようだ。「今までのやり方では映画人口は増えないと思います。でも、パッケージゲームからソーシャルゲームになった時に頭打ちになっていたゲーム人口が増えたように、映画が“人と人をつなぐもの”になれば、まだ観客は増える。それは東京発ではダメで、マスコミだけで宣伝していてはダメ。地方に発信する人がいることで『映画って久々に観たけど、面白いね』という人が出てくるんです。ただ、地域は映画を伝える“発信者”が少ないのが問題なので、今後はそこが課題だと思っています」

『サルベージ・マイス』

『ラーメン侍』

(C)2011「サルベージ・マイス」製作委員会