特に気を使ったのがクレジットの序列。映画の中で2人の名前が映し出されるときも、ちょっと不思議な配置になっていることに注目! 右から読むとスティーブ・マックイーンが先、上から読むとポール・ニューマンが先に見えるようになっているのだ。2人を対等に扱うという点ではマックイーン側も相当センシティブだったようで、マックイーンが強硬に主張した結果、2人のセリフの分量まで同じ行数になるように調整されたというから驚きだ。

ほかにもウィリアム・ホールデンフェイ・ダナウェイら豪華スターがズラリと出演している『タワーリング~』の中で、特にグッとくるのが老詐欺師のエピソードだろう。ブルジョアなご婦人をつかまえて偽の株券を売りつけようとしていたのに、気がつけばターゲットの老婦人にマジ惚れしてしまっている純情者を、往年のミュージカルスターだったフレッド・アステアが妙演。老いらくの恋の結末がどうなるかは映画で観ていただくとして、『タワーリング~』が好きな人にはたまらない要素なので話のネタにぜひチェックを。

逆に有名なスターは誰ひとりとして出演していないにも関わらず、“面白すぎる映画”として人気を博したのがスティーブン・スピルバーグ監督のデビュー作『激突!』。アメリカのハイウェイで大型トレーラーを追い越した主人公が、その大型トレーラーから執拗に追いかけられる恐怖体験をじわじわとあぶり出したスリラーで、襲ってくるトレーラーのドライバーの顔がまったく画面に映らない不気味な演出が話題となり、若きスピルバーグが天才っぷりを証明した傑作だ。

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もともとテレビ用の単発ドラマとして製作されたのだが、あまりのクオリティの高さにテレビだけではもったいないと、アメリカ以外では劇場用映画として公開されたこともスピルバーグ伝説のひとつ。

ちなみに『激突!』人気にあやかって、実質的なスピルバーグの劇場映画デビュー作である『ザ・シュガーランド・エクスプレス(原題)』までもが『続・激突!カージャック』なる邦題で日本公開されている。しかし実際は続編でもなんでもなく、ストーリー的にもスタイル的にもまったく関連がない別の映画。ハラハラドキドキの恐怖映画である『激突!』に対して、『続・激突!カージャック』は実話に基づいた切なくもほろ苦い犯罪ロードムービーなのである。『続・激突!カージャック』はスピルバーグ作品の中では比較的知名度は低いものの、映画ファンの間では長らく名作と語り継がれているので、スピルバーグ愛あふれる上司を見つけたらさらりと話題に出してみてはいかがだろうか?