ママたちのお出かけの強い味方「ベビー休憩室」。その一方で「母親と赤ん坊は指定された場所へ行け!」という声に傷つくことも。

そんな授乳環境整備の現状と課題について『ベビー休憩室コンセプトブック』でキッズデザイン賞も受賞した建築家の仲綾子先生に聞きました。

授乳室、足りてる?外出前にベビー休憩室のことを調べる家庭は8割超!

――ズバリお伺いします。母乳育児中のママのひとりとして「ベビー休憩室がもっとあったらいいのに」と感じることも少なくないのですが、授乳室の整備って進んでいるのでしょうか。

仲綾子先生(以下、仲): 施設の種別や地域によって状況は大きく異なるので、なんともお答えしにくいところではあるのですが、授乳やオムツ替えを取り巻く環境が大きく変化していることは間違いありません。

以前は町なかや電車の中といった「公共の場」で授乳やオムツ替えをする親子も珍しくありませんでしたが、最近ではあまり見かけませんね。

そういったライフスタイルの変化にともなって「ベビー休憩室」を整備する動きが、加速していることはたしかだと思います。

例えばショッピングセンターなどの商業施設であれば子育て世代の集客を意識して、役場や公民館といった公共施設であれば利用者の利便性を考慮して、授乳やオムツ替えのためのスペースを設けるところが増えてきています。

また国や地方自治体が少子化対策の一環として「子育てバリアフリー」を掲げている点も、後押しになっているでしょう。

国土交通省は「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」を平成24年度に改訂した際、新たに「授乳室及びおむつ替えのための設備」という項目を加え、さらに平成28年度の改訂では、配置、建具、サイン等の計画に踏み込んでいます。

また、地方自治体では東京都や大阪府、福岡市などが、授乳室やオムツ替え台の設備について条例で規定しています。

――国や地方自治体が、そんなことをしてくれていたとは知りませんでした!

仲:「お出かけ」は「子育てに欠かせないもの」だから、それを積極的にサポートしようという動きですね。

施設を整備・運営されている方々のご参考になるよう制作させていただいた『ベビー休憩室コンセプトブック』で実施・発表したアンケートでも、89%の保護者が赤ちゃんを連れて週1回以上、1時間以上のお出かけをしており、ほぼ毎日という人も16%いるという結果が出ています。

また、外出前にベビー休憩室のことを「必ず」あるいは「よく」調べると回答した人は50%にのぼり、「たまに」調べると回答した35%と合わせると実に8割以上が、出かける前にホームページなどでベビー休憩室について調べています。

国としても、地方自治体としても「お出かけしづらい環境では育児も難しい」という現実とママたちの要望をキャッチして、対策を打ち出してくれているんですよ。

でもそれで、ママと赤ちゃんの外出が楽になったかといえば……決してそうとも言えないのではないでしょうか。

――残念ながら、そのとおりです。冒頭でも申し上げたとおり「ベビー休憩室がもっとあれば」と常々感じています。やっぱりまだまだ、足りていないのではないでしょうか。

仲:実はその点について、私は、足りない場所もあるにはあるけれども、そんなに不足しているわけではないのではないか、という仮説を持っています。

不足はしていないけれども「足りない」「待たされる」「困ったな」と利用者が感じる理由があるのではないか。そこから、解決の糸口が見えるのではないか、と思っているのです。

――不足していないけれども「足りない」「待たされる」「困ったな」と利用者が感じている?どういうことでしょうか。

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