イマジネーションの力で“お気楽”授乳生活が楽しめる社会へ

村上:「公共の場での授乳」については賛否両論、入り乱れていますね。

個人的には「授乳は母子の権利だ!」と正論を振りかざすのもイヤだな、と思っています。もちろん“権利”なんですけどね。でも、授乳の様子を見慣れていない人たちがたくさんいるところで、露出度が高いのはどうかなぁと。

その反面、「そんなことは見るのも恥ずかしい」「絶対に隠して、見せるべきではない」という意見も一方的では……。でも、経験がない人、身近に授乳しているママがいなくて分からない人は、そう感じるのも仕方がないのかもしれません。

だからこそ、自分の知らない世界に対して「想像力」を働かせて欲しい。冒頭でお話したような、ママの立場、ママの置かれるシチュエーションを想像してみて欲しいと思いますね。

そしてママにも、できることがあります。ママもぜひ「想像力」を働かせてみてください。

例えば「授乳服」を活用すれば、赤ちゃんが泣く前に授乳できるので目立たず、周りの誰にも気づかれずに母乳をあげてしまうことができます。

ママが恥ずかしいという気持ちも、周囲の人たちの恥ずかしいという気持ちも受け入れたスマートな方法。自分の考えと違うことについて不寛容な人もいる社会の中で、ママと赤ちゃんの心身にとって、こういった解決策が強い味方になってくれるのではないでしょうか。

――村上先生のお話で“お気楽”授乳生活に、一歩近づけた気がします。乳腺炎も「怖い!怖い!」とばかり思っていましたが、ひとつひとつの原因と対策を知っておけば、不必要におびえることもないのですね。では今日のインタビューの最後に、お医者様としてあらためて、お出かけ前のママにアドバイスをいただけますでしょうか。

村上:赤ちゃん連れのお出かけ、初めはハードルが高く感じるかもしれませんが、けっこう楽しいですよ。

周りに迷惑かも、とママが心配するほど、気にする人は意外に少ないです。先に「ちょっとうるさくなるかもしれません、ごめんなさい」と言っておくと、お互い気持ちよく過ごせます。

ママの気分転換や心の健康のためにも、少しずつお出かけ経験を増やしてみましょう。

【取材協力】村上 麻里(むらかみ まり)先生 プロフィール

産婦人科専門医。【母乳110番】顧問。「母乳育児の指南書」の決定版とも評される『おっぱいとだっこ』(竹中恭子著・PHP電子)では監修も務める。実戦的な母乳育児の講演は各地で好評。都内の産婦人科クリニックに勤務。三姉妹の母でもある。

記事企画協力:光畑 由佳

15の春から中国とのお付き合いが始まり、四半世紀を経た不惑+。かの国について文章を書いたり絵を描いたり、翻訳をしたり。ウレぴあ総研では宮澤佐江ちゃんの連載「ミラチャイ」開始時に取材構成を担当。産育休の後、インバウンド、とりわけメディカルツーリズムに携わる一方で育児ネタも発信。小学生+双子(保育園児)の母。