母乳ママが「公共の場での授乳」を認めてほしい理由に「その場で授乳できないと大変なの!」というものがあります。

でもママたちの実態は、当事者以外には謎なのも事実。

母体に何が起きているのか、産婦人科医で【母乳110番】顧問の村上麻里先生に聞きました。

ママと赤ちゃんの負のスパイラル!体調不良を引き起こす原因にも?

――「公共の場での授乳」についての論争が続いています。

母乳ママたちから「できればすぐ授乳させてほしい」「タイミングを外すと身体にもトラブルが起こるから」という切実な声があがる一方で「大変大変って騒ぐけど、何がそんなに大変なの?」「みんな多かれ少なかれ苦労はあって、何も母乳育児中の母親だけじゃないんだけど?」という反論も聞かれます。

ここで争点となっているママたちの“大変さ”というのは、果たしてどの程度のものなのでしょうか。教えてください。

村上麻里先生(以下、村上):赤ちゃんが欲しがったらすぐに授乳する、いわゆる「適時授乳」ができないと何が問題(になるの)か、今日は医学的な観点からお答えいたしましょう。ご一緒に、状況を想像してみてくださいね。

まず、出かけた先で赤ちゃんがおっぱいを欲しがります。特に授乳しやすい場所を選んではくれません。「お腹が空いたなぁ」「ちょっとのどが渇いたな」「眠いからおっぱいタイムにしたいなぁ」など、その子なりのタイミングで欲しがるものです。

ところが、公共の場で、すぐ授乳ができない状況となると、赤ちゃんも困ります。泣いて要求するしかないわけですね。

ママは、赤ちゃんの泣き声で「周りに迷惑になっちゃう!どうしよう!」と、緊張してしまいます。

実は、赤ちゃんはママの気持ちを敏感に感じ取っていて、心が連動します。ママが不安だと、赤ちゃんもグズりやすかったり、反対にママがリラックスしていると、ごきげんで周りに笑いかけたり、ぐっすり寝てしまったり。

ですから、こういう緊張感は即座に伝わって赤ちゃんも機嫌が悪くなり、おっぱいをもらえない不満も加わって、もっと大声で泣いてしまいます。

周りの視線も集まり始めて、ママは、さらに緊張を強いられます。

――すごい悪循環ですね……そこから赤ちゃんの気持ちを立て直すのは、想像するだけでちょっと大変そうです。ママ自身も、パニックになりそうですし。

村上:そして、ママの授乳間隔が開いてしまうとどうなるか、についてですが。

乳汁を飲んでもらえないと、乳房が張って痛くなったり、熱を持ったりします。頻回に授乳している時期では、数時間でも、胸がパンパンになったりもします。

あまりに張ってしまうと、赤ちゃんが吸い付きにくい状態になることもあります。

こうなると、待ちに待った授乳タイムがやってきても、いつものように飲めないかもしれません。

――ここにも、ものすごい悪循環が……こうなると、たとえ授乳室までたどりついても、ホッとすることすらできないかもしれませんね。

村上:赤ちゃんの機嫌は悪くなるし、ママもぐったり、です。

そして、こういうシチュエーションは「乳腺炎」の誘因にもなりかねないので、少し気をつけておきましょう。

――乳腺炎!服が触れるだけで激痛が走る、といいますが……ママが注意していれば、予防できるものなのでしょうか。