『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』を手がけたリュック・ベッソン監督と、主演のミシェル・ヨー

ノーベル平和賞を受賞したビルマ民主化運動のリーダー、アウンサン・スーチー女史の半生を描いた『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』が21日(土)から公開される。映画化を熱望したヨーと、その熱意に応えたベッソン監督が公開前に本作への想いを語った。

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日本でも多くの報道映像が流れ、ニュースにその名があがることが多いスーチー女史だが、彼女の“素顔”は多くの人に知られているとは言いがたい。本作は、軍事政権が続くビルマ(現ミャンマー)で、政権に危険視されながらも自らの信念を貫いて民主化への道を邁進したスーチー女史の戦いと、愛する夫と子をもつ“ひとりの女性”としての彼女の姿を描いている。

ヨーは彼女の記録映像や資料を何度もチェックし、外見だけでなく、スーチーの話し方やちょっとしたアクセントのクセまでも再現しようとしたという。「外見についてはリュックのチームが集めてくれた資料の力を借りました。耳の形も特殊メイクで変えましたし、衣装も地元で買い付けた素材を使っています。でも、私は彼女の“内面”を知り、彼女のかもし出す“オーラ”を体現しなければならないと思いました」。

さらに本作ではスーチーだけでなく、彼女の夫の英国人マイケルの物語を描くことで、単なる伝記映画ではない“普遍的なラブ・ストーリー”に仕上がった。ヨーは「この映画はピュアなラブ・ストーリーでもあります」と言い、ベッソン監督は「かつてビルマは英国の植民地だったがスーチーの父であるアウンサン将軍が解放した。しかし、将軍の娘であるスーチーと英国人のマイケルは恋に落ちたんだ。これはビルマ版“ロミオとジュリエット”でもあるんだ」という。

しかし、本作は架空の物語ではない。スーチー女史は現在も民主化のための活動を続けており、ここで描かれているのは“現在も続いている物語”だ。「だからこそ、スーチーさんを裏切るようなことだけは絶対にしたくなかった」と力強く語るベッソン監督は「情報が完全ではない中での映画作りだったので、“彼女を助けるため”に描いたことが、結果として裏目に出てしまうかもしれないという恐怖をずっと感じていた」と振り返り、ヨーも「記憶というのはどこまで行っても曖昧なものです。だから、私たちは集めることができたパズルのピースを最善を尽くしてあわせていきました」と語る。

ヨーが「私たちの根本にあったものは“愛”と“尊敬”です」と説明する通り、本作は史実を題材にしながら、そこに息づく人々の“精神”を描き出した普遍的な人間ドラマに仕上がっている。

『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』
7月21日(土)公開