ウムト・ダー監督

デジタルシネマの祭典として国内外の新進監督が集結した「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2012」が22日にフィナーレを迎えた。最終日は各コンペティションの受賞作が決定。メインの長編部門の最高賞となる最優秀作品賞には、オーストリアを拠点に活動するウムト・ダー監督の『二番目の妻』が輝いた。

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見事に栄冠を手にした『二番目の妻』は、ウィーンのトルコ人家庭に嫁入りした若き女性の物語。意味深な題名が示すようにトルコ人の風習を切り口にした衝撃的なドラマが展開する。「(クルド人移民としてウィーンで育った)自身の生い立ちやトルコの伝統を反映して出来上がった作品」とまず明かしたダー監督は「当事者でないと理解しづらいところが多々あるはず。それがここ日本で認められたことは大きな自信になる」と語り、「まさかの受賞。心から感謝したい」と喜びをかみしめた。世界的巨匠、ミヒャエル・ハネケに師事した経歴を持つダー監督の今後の活躍に目が離せない。

一方、監督賞は、日本の中野量太監督が手中にした。受賞作『チチを撮りに』について中野監督は「幼くして父を亡くし、母子家庭で育った影響か“家族”に興味がある」と語り、「これからも笑いと涙が同居する僕にしかできない家族ドラマを作っていきたい」と将来を見据えた。なお同作はSKIPシティアワードとW受賞。さらに国内上映が確約されるSKIPシティDシネマプロジェクト作品にも選出された。ニュージーランドのプロデューサー、マーテン・ランバーツ審査委員が「独創的な作家性がある」と評したように、彼はユニークな感性の持ち主。日本映画の未来を担う存在に成長することを期待したい。

現在、日本には数々の映画祭が存在するが、実は世界の最新作が上映されている映画祭は少ない。その意味で世界の新作を集めた本映画祭は貴重な場であり、存在意義の高まりを感じる。本映画祭が注目した世界の才能が今後どう飛躍するのか注目したい。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2012

●短編部門(国内コンペティション)

取材・文・写真:水上賢治