スマートフォン人気が定着するなかで、端末メーカーの戦いが激しさを増している。人気ブランドが次第に固定化し、各メーカーの市場でのポジションが確立しつつあるなかで、LGエレクトロニクス・ジャパンの「Optimus」について首藤晃・統括部長兼モバイルコミュニケーションセールスチーム長は、「日本ではブランドが浸透していない」と認める。首藤統括部長に、ブランド力向上策を聞いた。

◎プロフィール

首藤 晃(しゅとう あきら)

1962年12月生まれ、福岡県出身。85年、熊本大学工学部機械工学科を卒業し、日産自動車に入社。技術業務に従事する。96年、デジタルツーカー九州に出向。00年、デジタルツーカーから社名変更したジェイフォンに転籍し、長崎支店長などを務める。その後、ジェイフォンから社名変更したVodafoneで四国支店長や北東北支店長を歴任。08年、モバイル事業の責任者としてLGエレクトロニクス・ジャパンに入社。現在に至る。

●「Optimus」を身近な存在に ブランドイメージの確立に取り組む

Q. スマートフォン市場をどう捉えているか。

A. 高速通信規格であるLTEへのシフトやCPUの性能向上など、スマートフォン自体は進化を遂げている。市場での評価は高まっているが、セールスの立場からいえば、技術面の強化は当社に限らず他社でも進めていることで、各社の端末に大きな差はない。そのなかで、日本市場に「Optimus」ブランドが浸透していないことを認めざるを得ない。最も気になるのは、スマートフォン市場が拡大するにつれて、特定ブランドによる寡占化が起き始めていること。日本では、アップルの「iPhone」、サムスン電子の「GALAXY」、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia」、富士通の「ARROWS」の4ブランドが確立しつつある。この状況を打破しなければならない。

Q. 打破への具体的な策は?

A. 「Optimus」を身近な存在にしていくことだ。実は、家電量販店や通信キャリア直営店のスタッフの方々は、「Optimus」を高く評価してくれている。とくに昨年冬に発売した「Optimus LTE」は、LTE技術をいち早く取り入れて好評を博した。このように販売店からの評判はいいのだが、彼らからは「お客様から指名買いがない」という指摘を受けている。要するに、当社のPRが足りないということだ。そこで、これまでイメージキャラクターだった韓国アイドルグループのKARAに代わって、俳優の向井理さんをイメージキャラクターに起用した。これまでは、韓国メーカーの色が少し強かったのではないかと捉えている。今後は、PR面で日本のお客様から評価を得る取り組みを進めていく。また、今年に入ってから家電量販店へのラウンダーを3倍に増やし、端末をアピールすることも取り組んでいる。

Q. 価格で他社との差異化を図る手もあるが……。

A. 以前、テレビ事業で低価格路線を敷いたことがあるが、「安かろう悪かろう」との声が上がって失敗した。今、お客様がスマートフォンに求めているのは、価格の安さではない。いかに自分に合ったスマートフォンを持てるかということだ。価格競争には絶対に踏み込まない。

Q. どのようなブランドイメージを確立するのか。

A. 先進技術とファッション性をあわせもつ機能とデザインで、お客様がファンになってくれるようなブランドイメージを確立する。夏モデルでは、この訴求ポイントを実現した。コンパクトなボディに防水やワンセグ、おサイフケータイなどの機能を備えた「Optimus IT」と、5インチIPS液晶ディスプレイを搭載した少し大きめの「Optimus Vu」だ。「IT」をコンパクトでオシャレな端末を求めている女性に、また「Vu」をPDAを愛用していたビジネスマンにそれぞれアピールしていく。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年7月23日付 vol.1441より転載したものです。

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