石ノ森章太郎氏のライフワークとも言うべき『サイボーグ009』。ひそかに改造された9人のサイボーグ戦士が、秘密結社ブラックゴースト(黒い幽霊団)などと戦う話だが、連載期間が長く、掲載誌も複数に渡っているため、基本的な設定が異なっていたり、ストーリーにも矛盾が生じたりするなど、やや複雑な展開になっている。

そこで最低限の知識として、9人のサイボーグ戦士をおさらいしておこう。

001:イワン・ウイスキー
ソビエト出身。赤ちゃん。複数の超能力と強化頭脳を持っている。
002:ジェット・リンク
アメリカ出身。両足からジェットを噴出して飛行できる。
003:フランソワーズ・アルヌール
フランス出身。9人の中で唯一の女性。聴覚と視覚が強化。透視能力もある。
004:アルベルト・ハインリヒ
ドイツ出身。体の各部にマシンガン、ミサイルなどの武器を内蔵。
005:ジェロニモ・ジュニア
アメリカ出身。強化皮膚と怪力を持っている。
006:張々湖(ちゃんちゃんこ)
中国出身。口から火炎や熱線を発射し、土に潜ったり、金属加工もできる。
007:グレート・ブリテン
イギリス出身。変身能力。無機物にも変化可能。
008:ピュンマ
アフリカ出身。潜水や遊泳能力が強化されている。
009:島村ジョー
日本出身。加速装置。万能型サイボーグ。

どうだろうか。包み隠さず言ってしまえば「しょぼいなぁ」と。小宇宙(コスモ)やらスタンドやら念やら錬金やら○○の実やら魔導具やらマギやらジンやら……、と書き出していけばキリが無いが、それらに比べれば実に単純な能力に終始している。

  

ただし『サイボーグ009』が連載を開始したのは、今を去ること約50年前の1964年だ。この年は東京オリンピックが開催された年であり、そこから思い当たる人がいるかもしれないが、東海道新幹線が開通した年でもある。今でこそ500系だ700系だと走っているが、先端が丸くどこかユーモラスな0系の新幹線が、時速210キロの当時世界最高速度で営業していた。もちろん携帯電話やパソコンなどはなく、アポロ11号が月面に到達する5年前でもある。

そんな時代に考えられたのであれば、今「しょぼい」と思えるものでも仕方が無いだろう。ただ子供心に彼らの能力を見てドキドキしたのも事実。また現在読み直しても遜色のない展開だと思う。むしろ能力が複雑化したことで、読者がついていけなくなったり、作者や制作側すらも抜け出せない矛盾にはまり込んでしまうことを思えば、それこそ「シンプル イズ ベスト」なのかもしれない。