<家電量販業界>相次ぐ大型買収が物語る家電量販店の新局面

2012.8.1 10:20配信
がっちりと握手するヤマダ電機の山田昇会長兼CEO(左)とベスト電器の小野浩司社長

家電量販店の再編への動きが急だ。6月にビックカメラがコジマを買収して業界2位の売上規模に躍り出た直後の7月、業界1位のヤマダ電機がベスト電器を買収することを発表した。こうした合従連衡は、これまでよくみられた規模の拡大によるメーカーとの価格交渉力の増強や、店舗展開の補完だけが目的ではない。オンラインショップとの差異化、海外への進出や拡大に向けた布石など、新たな時代の幕開けを告げる動きでもある。

●ヤマダ電機がベスト電器を買収へ ビックカメラはコジマ買収を完了

7月13日、ヤマダ電機はベスト電器の買収に関する記者会見を開催。今年12月までに実施する第三者割当増資を121億2000万円で引き受け、出資比率を現在の7.45%から一挙に51.16%に引き上げて子会社化することを発表した。

記者会見で、ヤマダ電機の山田昇会長兼CEOは「お互いのメリットになる提携」として、「デジタル家電の販売は厳しい状況が続いている。ベスト電器と組むことで、メーカーともウィン・ウィンの関係を築き、業界の発展につなげていく」と、買収の理由を述べた。ベスト電器の小野浩司社長は、「次の成長戦略を立てていくうえで、ヤマダ電機との提携が最適だと判断した」と述べ、121億円の資金を「店舗の活性化につなげていく」との考えを示した。

この発表の約2か月前には、ビックカメラがコジマを買収することを発表。6月26日に実施した第三者割当増資に伴ってコジマの株50.06%を取得し、子会社化を完了している。

5月14日に開催した記者会見では、ビックカメラの宮嶋宏幸社長が「仕入れの効率化や物流の統合など、コストを削減していく」と述べ、コジマの寺崎悦男社長は「2015年までに40~50の不採算店を閉鎖する」と明言するなど、経営の効率化を大きな目的の一つに掲げる。売上増への施策については、「両社の人材交流を積極的に進めて、デジタル機器に強いビックカメラと白物家電に強いコジマのノウハウを生かした総合的な販売を手がけていく」(宮嶋社長)との方針を示し、コジマの不採算店舗を閉鎖する代わりに戦略店舗として約40店をオープンすることも明らかにした。

●オンラインショップとの差異化 海外店舗網の拡大も

買収前に今年度(2012年8月期)の売上高5300億円を見込んでいたビックカメラは、昨年度(12年3月期)の売上高が3703億円だったコジマを買収したことで、単純計算で売上高は9000億円規模にまで拡大して業界2位に浮上する。ビックカメラの宮嶋社長は、「3年後(15年8月期)には売上1兆円規模を目指す」としている。一方、昨年度(12年3月期)の売上高が1兆8354億5400万円のヤマダ電機は、昨年度(12年2月期)が2617億500万円のベスト電器を買収して2兆円を超えることになる。

こうした大型買収の目的が、まずは規模の拡大にあることは確かだ。当然、淘汰される家電量販店は増えていく。しかし、業界全体を見渡せば、買収や提携・協業が増えるのは決して悪いことではない。

ビックカメラの宮嶋社長は、「いつ来店しても『楽しい』『ワクワクする』とお客様が意識する店舗づくりを目指す。そのためには、都市型と郊外型の長所を取り入れることが重要」と述べている。これは、競合店との差異化だけでなく、オンラインショップへの対抗策でもある。文化の異なる家電量販店同士が組んで、実店舗のあるべき姿を追求していく取り組みだ。

また、ヤマダ電機の山田会長兼CEOは「グローバルを見据えれば、規模の拡大を追求することが重要。ベスト電器との資本提携は長期的な戦略の一環でもある」とアピールしている。これは、家電量販店が日本にとどまることなく、海外でも出店を加速させていく姿勢を明確にした発言だ。実際にヤマダ電機は、瀋陽、天津、南京と中国に3店舗を出店。またベスト電器は、すでにシンガポール、マレーシア、インドネシア、クウェートに56店舗を擁し、これらの店舗がヤマダ電機の傘下に入ることになる。

これまで家電量販店は、競合店との価格競争を中心に生き残りをかけた戦いを続けてきた。しかし2件の大型買収は、競争がいま、足下の実店舗網の充実や海外展開の加速など、新たな局面に入ろうとしていることを物語っているのだ。(佐相彰彦)

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年7月30日付 vol.1442より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは

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