日本楽器製造(現ヤマハ)が創業した翌年に制定した商標「音叉をくわえた鳳凰図」

【LOGOS~企業や製品の顔となるロゴの歴史を追う】 楽器メーカーとして100年以上の歴史を持つヤマハブランドのロゴの傍らには、常に、同社の理念と創業者の思いが込められた音叉のマークが描かれてきた。 音叉は、鋼鉄で作られたU字型の棒に柄を付けたもので、たたいて音を出し、その振動数を楽器の調律の基準にする重要な道具だ。

ヤマハ広報部ブランド・商品広報グループの木﨑高宏主事は、「ヤマハ(旧日本楽器製造)の創業者・山葉寅楠氏が、音叉を使いながら熱心に調律法を勉強してオルガンを完成させたことから、思い入れが強い道具としてブランドロゴに取り入れたと考えられる」と話す。

音叉がロゴとして最初に登場したのは、ヤマハの前身である日本楽器製造が設立した翌年の1898年、同社が制定した商標「音叉をくわえた鳳凰図」だ。

現在使用しているロゴでは3つの音叉を組み合わせており、「技術」「製造」「販売」の3部門が、調和して協力する姿勢を表している。また、外側の円は世界を意味し、楽器や音楽を中心に、世界に広がっていくヤマハの生命力を表現する。さらに、山葉氏の名前に由来する「YAMAHA」の文字を英字で表記するのは、世界水準を目指すという思いが込められているからだ。

色については「紫色は国内外問わず古来より高貴な色とされ、優雅さや気品あるイメージから、楽器や音楽に携わるヤマハの事業に合致するとして、1950年代前半ごろに規定されたようだ」(木﨑主事)と話す。

音叉を使った調律は、現代ではほとんど行われなくなった。しかし、ヤマハの原点ともいえる音叉のマークは、音と音楽の基本を大切にする姿勢を示すように、今も使われ続けている。(BCN・南雲亮平)

企業名:ヤマハ

所在地:靜岡県浜松市中区中沢町10番1号

創業:1887年

※『BCN RETAIL REVIEW』2017年7月号から転載