我が子にはあれもこれも“オールマイティー”に出来るようになってほしいですよね。

「あれは出来るけど、これは出来ない」など苦手と得意のバランスが激しいのは困ります。

でも、苦手の克服をさせようと子どもを引っ張り回してしまうと、子どもは苦しいと思うんです。

1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』の著者の立石美津子がその理由をお話しします。

「ハンカチの汎化作用」って?

突然ですが、心理学で“ハンカチの汎化作用”という言葉があります。

ハンカチを拾うときに、中央を持ち上げると四隅も上がっていきます。

ところが、四隅を全部引っ張ろうとすると、「ハンカチを拾う」という目的が達成できなくなり、落としてしまいます。

子育ても「あれもこれも平均的に出来るようにしよう」と思ったり、他の子どもや兄弟姉妹と比べて全体的に伸ばそうとすると潰れてしまいます。

反対に、その子の持ち味、強みを伸ばした方が結果的に伸びていきます。

計算問題はできるけど、文章題は苦手な子の実例

筆者は小学生に算数を教えているのですが、文章題が極端に出来ない生徒がいました。

計算問題は何とか解答できるのですが、文章題となると…からきしダメです。

文章題が載っているプリントを見た途端、その子の顔は曇るのです。

けれども、その子の母親から「うちの子は計算問題はもう出来るので、文章題をたくさんやらせてください!」と強くお願いされていました。

保護者の要望にも応えなくてはならないので、文章題だけのプリントを渡していました。

ところが、その子は全くやる気を起こしません。それどころか、「もう、辞めたい」「どうせバカだから」、しまいには「消えてしまいたい」と、ただ文章題が出来ないことだけで自己否定するようになってしまいました。

「これはまずいぞ」と感じたので、私は保護者の意向に反して「もう文章題はやらなくていいから計算問題だけやりなさい」と言い、計算プリントだけをやらせるようにしました。これを続けていくうちにみるみる顔色が晴れてきて、学習に対して意欲的に取り組むようになりました。

ある日「もう、自信喪失状態からは脱出できただろう」と思ったので“ほとんどが計算問題、1問だけ文章題”のプリントを渡すようにしました。

すると、自信がある計算問題を解く勢いで、文章題にも以前のように投げやりになることなくチャレンジ出来るようになりました。

2年経過したのちは、文章題だけの問題にも取り組めるようになりました。