『ウェイバック -脱出6500km-』(C)2010Siberian Productions,LLC

今年はトム・ハンクスとの共演作『クラウド・アトラス』やアン・ハサウェイとの共演作『ワン・デイ 23年のラブストーリー』など4本もの映画に出演している新鋭英国俳優ジム・スタージェス。驚くべき実話に基づいた最新作『ウェイバック -脱出6500km-』が控えている彼のインタビューが届いた。

その他の写真

『ウェイバック…』は、第2次世界大戦中、ロシアのシベリア収容所に送られた政治犯の脱出の旅を描いた作品。ヒマラヤを越え、インドまで歩いたというポーランド人スラヴォミール・ラウィッツの手記が基になっており、食糧に飢えて木の皮を食べたり、何日間も砂漠をさ迷ったりと、本当にこんなことが人間に可能なのか? と思わされるシーンの連続だ。「撮影の前にサバイバル・エキスパートについてキャストでキャンプに行ったんだ。山に登って、ウサギを狩って料理をしたり、キャンプファイヤーを囲んでビールを飲んだり、長距離を歩いた。歩きながらの会話というのは、部屋で座っているときとは違ってくる。キャンプして僕らの中に団結力が生まれたと思うよ」とスタージェス。

本作では、戦時中の過酷な状況が浮き彫りとなる。31歳の彼にとって、これまで第2次世界大戦とは教科書の1ページでしかなかった。「この役を演じることで子供のころはあまり興味がなかった歴史を学ぶ良い機会になった。今は歴史にとっても関心がわく。演技ほど歴史を体で学べる授業ってないよね。例えば収容所のシーンなんて、宿舎の様子から洋服、食べ物、臭いまで何もかも細かく知ることができた。演技って、まるで歴史の実演みたいなものなんだ」。

スタージェスは、役のリサーチのため、シベリア収容所で生活した経験のあるポーランド人に実際に会って話を聞いたともいう。「戦争体験のある人たちは強健だなあ、と痛感させられたよ。精神的に僕らとはまったく違った強さを持っているんだよね。撮影が進行するにつれて、彼らの精神力を実感し驚かされることばかりだった。どうやって生き延びられたんだろう! って、キャスト同士で話しあってたんだ。現実に僕が同じ状況に置かれたら? 生き延びられないのは明白だね(笑)可能性ゼロ!」。また、ピーター・ウィアー監督は張り切りすぎて撮影現場で骨折までしたほどとも。しかしスタッフに担いでもらい撮影を続行したという。「自分の描きたい世界を正確かつ綿密に作り上げていく監督だよ。撮影前には、僕の元に沢山の本が郵送されてきた。次々に送られてきて、読み切れなくなったほどだ。とにかく彼の作品への情熱はただならなくて、それがキャストにも伝染したんだ。毎朝彼の元気な笑顔をみると、みんなのやる気がわいたんだ」。

『ウェイバック -脱出6500km-』

取材・文:高野裕子