でた!住所不定無職のJ-POP殴り込み2ndフルヴォリューム・シングル『トーキョー・ポップンポール・スタンダードNo.1フロム・トーキョー!!!』



トーキョー・ポップンポール・スタンダードNo.1フロム・トーキョー!!!
1,995円
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四の五の言わずにまずこちら。

住所不定無職「MAGIC IN A POP!!!」

ライフカミンバック!(isが入ってねえ!)

うおー、この意味もなく歩き出したくなる感じ! ウキウキ通りを行ったり来たりしたくなる感じ! このMVもサイコー可愛くって感涙ですが、わたし、自分がこの曲に映像つけるならぜぇったいに街中を闊歩したいよ! 闊歩! ベタか! だーってポップ大魔神ヒダカトオルの手腕なのかこの曲の跳ねた高揚感。聴くと脳みそが黙っていない。このリズムに乗って靴を鳴らして、自分も音楽を奏でたくなる! アステアみたいにステップ踏みたくなる! 歩くビートが身体に伝わって喜びばっかり増長しそう! いわゆるドキドキ!

住所不定無職は2007年、ギターとか担当のユリナを中心にザ・ゾンビーズ子(ギターとか)、ヨーコ(ギターとか)の3人で結成。職安で出会って意気投合したとゆうソバット(※)みたいなエピソードがまじかっこいいガールズバンド。しかし彼らのなかにあったのは「バンドやりたい! 大きな音でギターを鳴らしたい! “ジャカジャーン!”てやりたい!」とゆう衝動のみ。当時はコードの意味もゲインの意味もチューニングの意味もわからぬまま本能でギターをハウらせていただけという。普通ならこの段階で自分の才能のなさに挫折したりしそうなものですが、いかんせん物怖じしない乙女のしたたかさでライブを敢行。客席から「ほんとにヘタだ」「俺がチューニングしようか?」などの励ましを浴び、ゾン子ちゃんのソングライティングのセンス、そしてアイドル好きが高じたユリナちゃんのリスナーとしての耳センスの高さをもって徐々に話題になっていくのであります。「ビートルズなんて3曲しか知らない。 by.ユリナ」などとのたまいながらしれっと1stアルバム『ベイビー!キミのビートルズはボク!!!』をリリースしてしまうのです。これ、ユリナ嬢の名言→「楽器がヘタだから人前に出れない、じゃつまんないと思います。やりたいときにバンドをやりゃあいいんだよ!」

ちなみに1stアルバムは、たいへん1stらしい初期衝動に満ちた名盤です。


住所不定無職「I wanna be your BEATLES」

どうですかこのポップネス! ビートルズに真っ向勝負を挑んだ黄色人種a.k.a住所不定無職。この曲にビートルズに対するユリナちゃんの全知識を詰め込んだそうですが、分析するとつまり「ハローグッドバイ」と「イエローサブマリン」と「ヘルプ!」しか知らないとゆうことですね。さすがロックンロールに唾を吐く女ユリナ。こちら聴いてわかるように、1stアルバムのローファイさ加減は全バンド少年少女に「僕もわたしもバンドをやりたい!」の勇気を与えたに違いありません。ゾン子以外の二人は本作品レコ発の段階においてもまだチューニングというものがわかっていないようでした。そしてリリースされた1stフルヴォリューム・シングル『JAKAJAAAAAN!!!!!』。

住所不定無職『JAKAJAAAAAN!!!!! 予告編』

Yes,ラモーンズ! もー、1stのローファイ感どこ吹く風でど派手でど迫力でギンギンギラギラの痛快ウキウキ☆ロックンロール。猛烈キラーチューンがエクスプロージョンしまくっています。正直バンドにとって2枚目をどう出すかってめちゃくちゃ重要だと思うんですが、軽やかに予想の遥か先を見せつけてきた彼女たち。なんと「1.2.3!」は『めちゃイケ』のエンディングテーマにも抜擢されました。当然1stアルバムが好きなひとにとっては馴染めない部分もあるというか、嫌悪感をあらわすひともいたでしょう。しかしユリナ嬢二度目の名言→「言われなきゃだめですよね! あれ(1st)名盤だし!」

ほんとに末恐ろしい小娘なのです。ユリナという女は。

で、で、ようやく今回の『トーキョー・ポップンポール・スタンダードNo.1フロム・トーキョー!!!』。各曲のプロデュース陣に前述のヒダカトオルを始め、ポップスのアプローチでヒップホップを仕掛けるセンシティブなハイテンションラッパーことイルリメ、胸キュンポップの名をほしいまま!永遠のプレッピー&憧れのミスタースウェディッシュ!ことカジヒデキを迎え、実にバラエティに富んだ全7曲が惜しげもなく凝縮されたシングル1,995円を提示してきたのであります。

住所不定無職「トーキョー・ポップンポール・スタンダードNo.1~」予告編

ライフカミンバック!(isが!)

とにかく全編に渡るこのソングライティングの凄さたるや、今作でより磨きがかかったうえもはや洗練すらされてきています。全曲キラーチューンすぎてつらい! ゾン子のウルトラセンスはいうまでもなく、あらためてびびったのはユリナちゃんの言葉のリズム感。フェイクや促音を上手に使って美メロにさらにフックをかけてきておる。だって、最初のこのフレーズ↓

カーニバル!はじまりの合図に

びっくりして街は大さわぎ

「こりゃ大変だ」「そりゃ最高さ」

まちに待った24時間ピーカン太陽

  

くりしてまちは大さわぎ

「こりんだ~」「そりおさ~」

ちに待たにじうよじかんピーカン太陽

 
どうですかこの促音遣い! 「まちに待った」から「ピーカン太陽」までの抑揚がまた気持ちよすぎるぜ! 見事! さっすが全盛期つんく♂の申し子です。キラーチューンのなんたるかを肌で知っている。ユリナちゃんと話すたび、そのキラーチューンへのこだわりに怨念すら感じるほどなんだけど、つまり、メロディの隙間にはびこるキラキラをいかに宝石にしてみせるか。それがポップミュージックであり、それがキラーチューンであり、それが住所不定無職の音楽なのだと思います。彼女らの曲には妙なエクスキューズがない。頭でっかちさもない。ライオットガール的な自意識もないしましてや辛気臭さなど皆無。大好きなキラーチューンを大きな音で鳴らせる幸せに満ち満ちている。きょうびここまであっけらかんと、喜びに満ちた開放感を高らかに歌える存在って稀有です。でもポップミュージックの魔法って、つまりそういうことだと思う。愛し愛されて生きる私たちの、愛し愛されて生きたい!と願う私たちの、パッションを、パワーを、ハッピーを、そのテンションを、そのまま3分間に真空パックできる魔法、すなわちそれがポップミュージックってやつだと思うのです。あらゆる感情の高まりの沸点を暴発させる装置、すなわちそれがキラーチューンだと思うのです。つまり住所不定無職の音楽は、胸を焦がすほどドキドキの沸点がスパークしている。「今世紀最大のラブストーリー!」なんて平気で口走って、太刀打ちできないポップミュージックの魔法で私たちの恋を、愛を、ライフを、呑み込んでしまうのだ。

1995年の冬、小沢健二は「喜びをほかの誰かと分かり合う! それだけがこの世の中を熱くする!」てゆって、続いていく僕らのストーリーを歌った。2011年の冬、住所不定無職は「ねぇ、待ち合わせしようよ東京タワーで、雪が降ったらさ」てゆって、終わらない私たちの物語を歌う。瞬間、私たちはウズウズしたドキドキへ真っ逆さま。痛快ウキウキポップンロールの魔法=マジキナポップ!! にかけられてうっとり熱っぽく興奮してしまうのだ。コードもわからない、チューニングもできない、ただひたすら「ジャカジャーンがやりたい!」で音楽を鳴らし始めた3人は、そのわくわくもドキドキも抱きしめたままいよいよJ-POPに殴り込みをかけてきた。わたしはひそかに思ってる。いつか住所不定無職は、私たちが失ったオザケンを超えてくれるのではあるまいかと。今後リリースされる(であろう!)彼女たちの2ndアルバムは、それほどのスケール感で純然たるポップミュージックに挑んでくれるのではなかろうかと。

なーんてゆう第3者の期待も羨望もまたは嫉妬もぜーんぶスルーして「“ジャカジャーン!”がやりたい!」と「キラーチューンにしか興味がない!」と我が道をゆく住所不定無職の首領(ドン)ユリナの欲望と、炸裂するザ・ゾンビーズ子ちゃんのメロディメイカーぶり、そして天然美少女ヨーコちゃんのアンニュイぶりなどなどガールズ3人組のポテンシャルにぶるぶる震えながら次の展開を待つ! のみ! です! (よろしくー!)

※ソバット:メンバーのモトアキ(G)とヒデ(B)が少年院で出会って意気投合し結成されたパンクバンド。結成エピソードがまじレジェンド。