量販店の実売データを集計した「BCNランキング」のデータで、従来型の携帯電話とスマートフォンの販売台数が逆転し、スマートフォンの割合が初めて5割を超えたのは2011年7月。以降、携帯電話全体の月間販売台数に占めるスマートフォンの割合は人気機種が発売されるたびに上昇し、今年7月には過去最高値を更新した。各キャリアの2012年夏モデルのラインアップが示すように、携帯電話の売れ筋は完全にスマートフォンになった。

●スマートフォンの販売比率は過去最高の73.5%、8月はさらに上昇する見込み

BCNでは、「BCNランキング」の調査・分析精度の向上のために、随時カテゴリ(ジャンル)の変更や集計対象製品の見直し・追加などを行っている。「携帯電話」では、これまで「販売金額0円」の製品は「販売」されたとはみなさず、集計対象外としていたが、携帯電話など、回線契約を伴う一部の製品では、端末代金の分割払いの一般化や同時購入で無料プレゼントなどのキャンペーンで「販売金額0円」で計上されるケースが増えてきたため、これらを含めたほうがより実勢に近いと判断し、過去のデータを含めて集計対象にすることにした。

集計方法の変更に伴い、携帯電話の月間販売台数に占めるスマートフォンの割合(スマートフォンの販売比率)は、以前に掲載した記事やグラフで紹介した数値よりおおむね3~6ポイント、最大6.7ポイント下がった。2010年12月に初めて4割を超え、2011年6月、7月に一気に上昇し、秋から冬にかけてさらに上昇したという、これまでお伝えしてきたスマートフォン市場拡大の「流れ」自体は変わらないが、初めてスマートフォンの割合が5割を超えたのは2011年6月ではなく7月(54.0%)、初めて7割に達したのは2011年10月ではなく12月(70.3%)、2012年6月以前の最高値は2012年3月の71.6%(変更前は77.8%)となる。

スマートフォンの月間販売台数は、2012年3月、2011年12月、2012年7月の順に多く、7月は従来型携帯電話の販売台数が減少したため、相対的にスマートフォンの構成比が上昇し、新たな集計方法では過去最高となる73.5%に達した。8月は、1~8日の途中集計の時点で7月の数値を上回っており、過去最高をさらに更新することになりそうだ。

●7月の機種別1位は「GALAXY S III」、夏モデルではNo.1の売れ行き

続いて、機種別の携帯電話ランキングをみていこう。SIMフリー端末を含む携帯電話全体の2012年7月の販売台数1位は、6月28日発売のNTTドコモのAndroid搭載スマートフォン「GALAXY S III SC-06D」が獲得。「GALAXY S II SC-02C」以来、13か月ぶりに「GALAXY」シリーズが機種別1位に輝いた。

2位は、ソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」16GBモデル、3位にはドコモの「ARROWS X F-10D」が入った。トップ10内には、ドコモの7月発売の新製品が2機種ランクインし、6位の「みまもりケータイ2」以外は、すべてスマートフォンだった。

「iPhone 4S」をキャリアごとに合算した場合は、ランキングはソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」(9.105%)、「GALAXY S III SC-06D」(9.103%)、auの「iPhone 4S」(7.225%)の順となり、「GALAXY S III SC-06D」は、小数点第4位を四捨五入してわずか0.002ポイントの僅差で1位を逃してしまう。とはいえ、今年5月以降に発売された2012年夏モデルに限ると、今のところ累計販売台数No.1で、2位グループを大きく引き離している。最終的にどうなるかは、8月、9月の売れ行き次第だろう。

●ドコモの注目機種「ARROWS X F-10D」はキャリア別では2位に食い込む

続いて、主要3キャリア、ドコモ・KDDI(au)・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、キャリア別のランキングでは、iPhone 4S/4の各機種を合算し、1機種としてカウントしている。

ドコモは、前月同様「GALAXY S III SC-06D」がトップ。シェアは18.2%に達し、他を引き離している。トップ10のうち、6位の「N-03D」、8位の「Xperia acro HD SO-03D」、9位の「キッズケータイ HW-02C」、10位の「らくらくホン ベーシック3」以外、すべて6~7月に発売された最新スマートフォンで、なかでも「ARROWS X F-10D」は、7月20日の発売ながら2位に食い込んだ。

auは、「iPhone 4S」が引き続きトップ。「HTC J ISW13HT」も好調で、2か月連続で2位につけた。「F001」「mamorino2」など、従来型携帯電話も4機種ランクインしている。

ソフトバンクモバイルも、引き続き「iPhone 4S」がトップだった。ソフトバンクモバイル、auとも、「iPhone 4S」の販売台数は、6月より7月のほうが多く、それぞれが実施しているキャンペーンの効果が出ているようだ。

●スマートフォンのOS別シェアはAndroidが優勢 押され気味のiOS

これまで国内で最も多く売れたスマートフォンはアップルの「iPhone 4S」(詳しくは<「iPhone 4S」が「日本で一番売れたスマートフォン」に、発売から約8か月で>を参照)で、7月単月でも、2キャリアの販売分を合算するとシェア16.3%でトップだった。

しかし、スマートフォンのOS別販売台数シェアをみると状況は一変し、iPhoneだけの「iOS」より、搭載機種の多い「Android」が優勢になる。スマートフォンが本格的に広がり始めた2010年11月以降、「iPhone 4S」発売直後の2011年10月・11月を除き、iOSがAndroidを上回ることはなく、iOSは、Androidにおおむね40~50ポイント、最大70.9ポイントもの差をつけられている。

7月の携帯電話の販売台数は、前年同月比84.8%と、前年を下回った。スマートフォンに限ると115.0%と前年を超えているものの、伸び率は2012年1月以降、6月に次いで低かった。しかし、もちろん市場拡大のピークが過ぎたわけではない。ドコモ夏モデルの注目機種の一つ、「Xperia GX SO-04D」の発売時期が当初の7月中から8月に遅れた影響だろう。この結果、夏商戦のピークは例年の7月から8月にずれこんだ。誰もがスマートフォンを持つ必要はなく、興味がない人、合わないと思う人は、従来型携帯電話を選べばいい。ただ、実質負担額を下げる各種キャンペーンの効果もあって、スマートフォンがますます広がっているのは確かだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。