危険から逃げた子どもたちの体験をリアルに表現

『とにかくさけんでにげるんだ わるい人から身をまもる本』

■ベティー・ボガホールド(著)、川原まり子(絵)、安藤由紀(訳)、岩崎書店

平成28年度の「警察白書」によると、平成27年の子ども(13歳未満)の「強制わいせつ」の被害件数は881件、「強姦」は61件、「公然わいせつ」は140件。

平成18年から27年までの被害件数の推移を見ると、強制わいせつや強姦は、約10年間でほぼ横ばい状態、公然わいせつは増加傾向にあります。

子どもが被害者となる犯罪の認知件数自体は、近年減少傾向にあるそうですが、性被害に限定すれば、減っているとはいえません。

日頃からこうした性被害や誘拐事件を心配して「知らない人について行ってはダメ」と言い聞かせているママ、パパも多いと思います。しかし子どもの立場に立ってみると、そう言われただけでは、何が危険なのか、どういうことが起こるのか、いまひとつイメージできないでしょう。

そこでおすすめなのがこの本です。

性被害に関しては、先述の2冊でも軽くふれられていますが、アメリカ人の著者による本書では、ただ注意を促すだけでなく、子どもたちが身の回りの大人や知らない人に体をさわられそうになったり連れ去られそうになった体験が、シチュエーション別に、詳しくリアルに綴られています。

イラストは柔らかい水彩タッチで生々しさはないのですが、性被害の怖さはきちんと表現されているので、子どもも「とにかく叫んで逃げなきゃいけないんだ!」と危機感を持ってくれるはず。

子どもが実際に性被害に遭った場合や遭いそうになった場合に親がとるべき対応についても、ストーリーの中に描き込まれているので、ママにも参考になります。

性とセックスを包み隠さず解説! 小学生以上向き

『ぼくどこからきたの?』

ピーター・メイル(著)、アーサー・ロビンス(絵)、たにかわ しゅんたろう(訳)、河出書房新社

現代社会では、性にまつわる情報が氾濫しているので、いまどきの子どもは、小学校低学年でも、セックスについて口にすることがあるようです。

うすうす感づいた時点で、親に「赤ちゃんはどうすればできるの?」と質問する子どももいるでしょう。そんなとき、ママは「もうちょっと大きくなってからね…」と言葉を濁してしまうかもしれませんね。

しかし、ごまかしたままにしておくと、親以外の情報源から間違った知識を仕入れてしまう可能性もあります。性に関して「口にしてはいけないこと」というネガティブなイメージだけを持ってしまうのも心配です。

子どもにセックスのことをきちんと伝えるのに最適なのが、この本。表紙と扉には、タイトルのほかに「あるがままの いのちのはなし。ごまかしなし、さしえつき。」というコピーが書かれています。

その言葉の通り、たとえばママとパパがベッドにいるシーンでは、セックスのことを「おんなのうえに よこになって、 ペニスを おんなのなかに、ヴァギナに いれることだ」ときちんと、具体的に説明しています。

さらに、精子と卵子の出会い、妊娠中のママのお腹の中で赤ちゃんが成長していく様子も詳しく解説。いわば命が誕生するまでのすべての行程が、ユーモアあふれる語り口とコミカルなイラストで、明るくポジティブに表現、説明されているのです。

いつ読んであげるかは、子どもの性格や早熟度にもよると思いますが、文字が多く、頭で理解しなければならない新しい情報や知識が多く含まれているので、就学前の幼児には少し難しいかもしれません。

逆に、すでに子どもが大きくなっていて読み聞かせるのが不自然に感じる場合は、「読んでみてね」とプレゼントするのもアリでしょう。

まとめ

以上、幼児向けの本3冊と、小学生以上におすすめの本1冊をご紹介しました。

日本の学校でも性教育の授業はありますが、その時間は少ないといわれています。

また、子どもが思春期に突入すると、避妊や性感染症予防の知識が必須になりますが、中学生になってから急に親と性の話をするのは少しムリがありますよね。

将来、子どもに恋愛や性の悩みが生じたときに相談に乗りやすくするためにも、異性と良い関係を築いてもらうためにも、子ども時代のうちに、ママやパパから、自分の体を大切にすることや命が始まることの素晴らしさといった話をしてあげられるといいでしょう。

子どもの前で性のことを話すのは気恥ずかしいものですが、そんなときこそ絵本の力を借りてみてはいかがでしょうか。

京都在住ライター。私大文学部を卒業し、会社勤めを経てフリーライターに。東京都内で活動した後に、京都市左京区に引っ越し出産。その後は京都で子育てをしながらライター業を続ける。インタビュー・取材記事をはじめ、カルチャー、ヘルスケア、生活などのジャンルで幅広く執筆。

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