宅間孝行 (撮影:源賀津己) 宅間孝行 (撮影:源賀津己)

笑えて泣ける芝居と高い評価を受け、出たいと熱望する俳優が後を絶たない劇団、東京セレソンデラックス。そんな人気劇団が、次回作『笑う巨塔』で15年の歴史に幕を閉じる。主宰にして作、演出、出演の3役を兼ねる宅間孝行は、ドラマ『花より男子』や映画『愛と誠』など、数々の脚本を手がけてきた奇才。宅間が解散を前に何を思うのか、その胸の内を訊いた。

東京セレソンデラックス・チケット情報

解散について「数年前から考えるようになっていた」と明かす宅間。もちろん周囲からは驚きの声が多く寄せられたが、「うちは劇団とはいえ、ずっとプロデュース集団みたいな形でやってきましたからね。ただ集客も含め、幸せな道を辿ってきた劇団だったなと。そこに一区切りつくということでお客さんには、セレソンの最後に立ち合ったんだっていう、そういうライブならではの醍醐味を、ぜひ味わってもらいたいです」。

切なさを前面に押し出した作品から、一気に注目を集めるようになったセレソン。だがこの『笑う巨塔』は、2003年に上演された『HUNGRY』の改訂版に当たり、非常にコメディ色の強い作品だ。なぜ宅間は、解散公演に本作を選んだのか。「たまたまなんです。去年の『わらいのまち』にしろ、ずいぶん前からこの2年間のラインナップはコメディ中心にしようと決めていて。ただ震災があったり、やっぱり今、コメディの持つ役割ってすごく大きい。だからこういう作品をやることは巡り合わせというか、非常に意味のあることなんじゃないかと思います」。

笑いは難しい。そんな考えを多くの作家から聞いてきた。しかし宅間の口から出たのは、「僕は笑いって、そんなに難しいものだとは思っていなくて」という意外な言葉。「僕にとってはもっと親しみやすいというか、そんな高尚なものじゃないと思うんですよね。普段の会話でも、人は自然と相手を笑わそうとしている。だから僕がよく俳優に言うのは、『お客さんが600人いたら、その600人のお客さんと会話をしてください』ということ。つまりそのお客さんとの空気感だったり、テンポ感を作ることが、コメディをやる上では非常に大事なことだと思うんです」。

宅間はこう言う。「僕は演劇を作っているんじゃなくて、エンターテインメントを作っているつもりなんです」と。「動物園や遊園地にも負けないエンターテインメントを作ることで、お客さんの間口はもっと広くなるはず」。解散公演にして宅間は、あくまで前向きな挑戦を続ける。

公演は10月3日(水)から28日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演。その後、札幌、新潟、大阪、広島、福岡、名古屋で巡演する。チケットは一部を除き発売中。

取材・文:野上瑠美子