映画『あなたへ』に出演した高倉健 撮影:今津勝幸

日本映画界を代表する名優、高倉健の主演作『あなたへ』が25日(土)から公開される。2006年公開の『単騎、千里を走る。』以来、6年ぶり、205本目の出演作について高倉が語った貴重なコメントがこのほど到着した。

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本作は、15年連れ添った妻の遺骨を散骨するため、妻の故郷の長崎へと自家製のキャンピングカーで旅をする男の姿と、そこで男が知った“妻の本当の想い“を描き出すロードムービーだ。

中国のチャン・イーモウ監督とタッグを組んだ前作から6年。もちろん、この期間には多くの企画や出演依頼が高倉のもとに寄せられたが、高倉は「やっぱりあの中国の、チャン・イーモウ率いる百何十人のスタッフから受けた影響というのは、間違いなく僕のなかでとても大きかった。映画を撮ってお金をもらう生活が、とてもむなしく感じたんですね。だから、映画だけじゃない。CMも何もかも、一切を断ったんです。もう何年か経ったらわかるんじゃないかな、その理由が。でも、今は答えられない」と振り返る。

転機が来たのは、『夜叉』や『あ・うん』を手がけた故・市古聖智氏が遺した原案を、繰り返しタッグを組んできた降旗康男監督のメガホンで映画化するという企画が舞い込んだことだ。「今回強かったのは、僕と監督は、今後そんなにたくさんの映画を撮れないだろうなって感じたことと、「日本映画界にはこういう監督さんがいらっしゃるよ」ってことを新しいスタッフに知ってもらわなきゃいけない、そういう役目が俺にはあるんじゃないかなと思ったんです」。本作で高倉は、田中裕子、大滝秀治、ビートたけしら過去に共演歴のある俳優たちだけでなく、浅野忠信や綾瀬はるから若い俳優たちとも共演した。「やっぱり、仕事をするってことは新しい人と出会うってことだから。“出会う”ってことはいいよね」。

デビューから半世紀以上、映画界の最前線で演じ続ける高倉にとって、演技とは“想いを伝える”こと。それは妻への想いを抱えて日本を横断する本作の主人公とも重なる。「俳優が作られた話を演じて、他の人と比べて高いお金をもらっているのは、やっぱり想いを伝えるってことだからだよね。だからそのとき、なにか夢中になってやれるもの、それは自分がもらった役なんだけど、そうだよなって共感して演じられる、そういう気分のときじゃなくては、いいものにはならないんだよね」。

亡き妻の想いと、自身の妻への想いを抱えて、長い旅を続けた主人公・倉島は、旅路の果てに何を見つけたのか? 映画『あなたへ』は、6年ぶりに高倉が観客に伝えたい“想い”がつまった作品に仕上がっている。

『あなたへ』
8月25日(土)公開