新生児科医から、母乳育児に悩むすべてのママたちへ

――母乳育児のメリットを医学的にも社会的にも、またママの苦労を減らすという意味からも広くご教示いただいたことで、これから一層前向きに、赤ちゃんに授乳してあげることができそうです!では最後に新生児科医として「公共の場での授乳」等々、ママと赤ちゃんが直面する問題に揺れるママたちに、アドバイスやメッセージをいただけますでしょうか。

奥:まず、おっぱいをあげているママへ伝えさせてください。

あなたがおっぱいをあげたいと思うのは“普通”のことで、あなたの“ワガママ”でも“こだわり過ぎている”わけでもありません。なんといっても「国家戦略」なんですから、威張って授乳してみませんか?

そして併せて、おっぱいをあげていないママへも伝えさせてください。

あなたのおっぱいがあまり出なかったのだとしたら、それはあなたの体質のせいでも、頑張りが足りなかったせいでもありません。多くの女性は適切な支援さえあれば出るものなので(そうでなければ、人類はとっくに滅びています)、それがなかっただけであってあなたのせいではありません。

なかには病気の治療といった事情のために、母乳育児をあきらめたママもいるでしょう。

新生児科医として申し上げますが、母乳育児でないことに負い目を感じたりする必要はありません。威張ってミルクで育てればいいのです。ちなみに我が家の子どもも今は大人ですが、ミルクで育っているんですよ。

すべてのママが誇りを持って、そしてのびのびと、社会の中で赤ちゃんと過ごしていけることを祈っています。

記事企画協力:光畑 由佳

【取材協力】奥 起久子(おく きくこ)先生 プロフィール

新生児科医(公益社団法人地域医療振興協会東京北医療センター小児科)。母乳育児支援に必要な一定水準以上の技術・知識・心構えを持つヘルスケア提供者を認定する国際資格「国際認定ラクテーション・コンサルタント」(IBCLC=International Board Certified Lactation Consultant)も有し、NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会では教育研修事業部長も務める。著書(共著)に『母乳育児支援スタンダード』(医学書院)ほか。

15の春から中国とのお付き合いが始まり、四半世紀を経た不惑+。かの国について文章を書いたり絵を描いたり、翻訳をしたり。ウレぴあ総研では宮澤佐江ちゃんの連載「ミラチャイ」開始時に取材構成を担当。産育休の後、インバウンド、とりわけメディカルツーリズムに携わる一方で育児ネタも発信。小学生+双子(保育園児)の母。