新田洋/スクールメイツ『行け! タイガーマスク』(『タイガーマスク』OP)

極悪非道な悪役レスラーを育成する闇の組織「虎の穴」。孤児だった主人公、伊達直人は虎の穴にスカウトされ、死亡者や再起不能者が続出する地獄の特訓の末に強靭な肉体と狡猾なテクニックを体得、虎の覆面を被ったプロレスラー「タイガーマスク」へと生まれ変わります。

タイガーマスクとしての素性を隠し、プロレスの試合で稼いだファイトマネーを自身が育った孤児院へと寄付する伊達直人ですが、上納金を組織へと収める契約を反故にした彼を制裁する為、虎の穴は次々に刺客を差し向けます。タイガーと虎の穴の悪役レスラーによる地獄の抗争は、その苛烈さを試合毎に増していき……。

『タイガーマスク』は、故・梶原一騎先生原作、辻なおき先生の作画による劇画作品です。悪役としての出自を持ち、自身の身体に染み付いた悪辣な反則ファイトと、正統派レスラーとしての使命感の間で煩悶する主人公像や、自身の姿を隠し過酷な死闘に身を投じるタイガーの姿を描く悲壮なストーリー展開など、ハードでシリアスな作品性が大きな特徴となっています。

一方で、ジャイアント馬場選手やアントニオ猪木選手を筆頭に、当時の日本プロレスの所属レスラーや有名外国人レスラーが実名で登場する梶原一騎作品らしい史実とフィクションが交錯する物語性や、奇想天外なアイデアと奇抜なデザインを盛り込んだ悪役レスラーのキャラクターなど、娯楽性も大いに盛り込まれた一作です。

80年代には、本作の主役である「タイガーマスク」が実際に新日本プロレスのマットに登場。"四次元殺法"と呼ばれた独創的なアクションと華麗な空中技を武器に国民的な人気を獲得し、プロレス人気を大いに盛り上げました。

"初代タイガー"の引退後も、そのキャラクター性を引き継いだ後代のタイガーマスクや、マスクの高いデザイン性から派生した後続のマスクマンも多数誕生。日本のプロレス界で、最も有名な覆面レスラー、それが「タイガーマスク」なのです。

アニメ版の主題歌だった『行け! タイガーマスク』は、壮大で美しいメロディをバックに、タイガーの勇猛な姿を歌い上げる正統派のヒーローソング。近年、舞台を現代に移してリメイクされた『タイガーマスクW』では、「湘南乃風」によってカヴァーされるなど、そのキャラクターと同様に決して古びることがないナンバーです。

弘妃由美『怒りの獣神』(『獣神ライガー』OP)

正確には、"プロレスアニメ"の主題歌ではないものの、プロレスと切っても切り離せないアニソンが、この『怒りの獣神』です。

この曲がオープニング主題歌として使用されていた『獣神ライガー』は、1989年から90年に掛けて放映された巨大ヒーローアニメ。"バイオアーマー"と呼ばれる生体スーツを身にまとい「獣神ライガー」へと変身する主人公と悪の軍団「ドラゴ帝国」との闘いを描いた作品です。

本作には、永井豪先生が原作者として参加しており、夕方アニメとは思えないバイオレンスなシーンやグロテスクな描写が頻出した作品としても知られています。アラフォーなアニメ、プロレスファンの中には、一種の「トラウマ作品」として、そのタイトルが脳裏に刻まれている方も多いのではないでしょうか?

アニメ本編も多くの見どころを有した作品なのですが、この作品の最も偉大なところは、ある有名プロレスラーを現実世界に生み出した点にあります。

その有名プロレスラーとは、新日本プロレスの獣神サンダー・ライガー選手。実は、ライガー選手は、このアニメとのタイアップ企画で誕生した覆面レスラーだったのです。

新日本プロレスの若手レスラーだった山田恵一選手が、遠征先の英国で「リヴァプールの風になった」ことで消息を絶ったのと入れ替わるように、アニメをモチーフにした謎の覆面レスラー「獣神ライガー」は日本のマット界に登場します。

永井豪先生も入れ込んでいた謎の格闘術「骨法」の動きを取り入れた打撃や、ストロングスタイルとルチャを融合させた関節技の数々、そして、当時、ファンの度肝を抜いた必殺技「シューティングスター・プレス」に代表される華やかな空中技で、ライガー選手は、瞬く間に新日本マットを代表する主役の一人となりました。

アニメ放映終了後も、「ライガー」のキャラクターは継続し、マスクとコスチュームのデザインやリングネームのマイナーチェンジを行いつつ、今も、現役バリバリの人気レスラーとして活躍中です。ライガー選手、最近では、本職であるプロレスラーとしての活動に加えて、テレビのバラエティ番組でも、お馴染みの顔になっていますよね。

『怒りの獣神』は、ライガー選手の入場曲としても使用されている楽曲で、どの会場でもこの曲のイントロが流れると観客のボルテージは一気に爆発します。プロレスファンに最も愛されているアニソンと言えるでしょう。