ジョニー・シー会長

ASUSTeK Computer(ASUS)が、インテルが提唱する超薄型・軽量ノートPCの規格「ウルトラブック」に準拠した「ASUS ZENBOOK」を11月3日に発売した。これまでにない「薄さ」と「速さ」を実現し、これまでのノートPCとは一線を画した製品として注目が集まっている。「ZENBOOK」は、果たしてノートPCの需要を活性化することができるのか。「モバイル端末の概念を打ち破る」とアピールする台湾本社のジョニー・シー会長に、「ZENBOOK」の可能性をはじめとした今後の戦略を聞いた。(BCN・佐相彰彦)

――「ZENBOOK」の特徴を教えて下さい。

シー 「ZENBOOK」は、デザインや機能など、これまでのノートPCはもちろん、モバイル端末の概念を打ち破る製品です。例えば、アルミニウム一枚板からつくったきょう体は最薄部3mmの薄さで、波紋をイメージしたデザインに仕上げています。機能面では、スリープモードから約2秒で立ち上がる「Instant On」機能を搭載しています。見た目はシンプルでありながら、デザイン性を重視し、なおかつ複雑な機能を追求している。当社のエンジニアが最高のものをつくりあげたと自負しています。

――ASUSは多くのPCを揃えていますが、「ウルトラブック」はどのような位置づけになるのでしょう。

シー 時代が変化している状況下では、PCも変化していかなければなりません。ウルトラブックに準拠した「ZENBOOK」は、まさに新しいデジタル時代に対応した製品です。もちろん、「ウルトラブック」だけを出していればいいというわけではありません。デスクトップPCや「ウルトラブック」以外のノートPCなど、当社が発売しているアイテムは、どれ一つ欠けてもいけない。「ウルトラブック」を発売したからといって、「このアイテムをなくす」という判断は時期尚早です。

――ということは、「ウルトラブック」でラインアップが増えたというだけの位置づけなのですか。

シー そういうわけではありません。新しいデジタル時代に対応したアイテムであることは確かですが、ほかのかたちのPCにも、それぞれの役割があるということです。今の状況は、日本の歴史にたとえれば戦国時代ということでしょうか。戦国時代のなかで「ウルトラブック」が誕生した。「ウルトラブック」がラインアップの一つに入ったことで、当社のビジネスの幅が広がった――このように確信しています。

――今は、PCだけでなくスマートフォンやタブレット端末と、消費者には多くの選択肢があります。PCの役割はどうなるのでしょうか。

シー 今後は、一台の端末でエンタテインメントと仕事の両方をこなす時代に入ります。マルチに使うことができるPCの役割は、重要になってくるでしょう。しかし、だからといって当社がスマートフォンやタブレット端末に力を入れないというわけではありません。スマートフォンとタブレット端末を含めて、同じ目的をもった多くの種類の端末があるという、やはり戦国時代という状況なんです。どのアイテムに力を入れるかを考える時期ではない。さまざまなアイテムの可能性を把握して、われわれのビジネス拡大に向けたシナリオを考える。当面の間は、これに取り組んでいきます。

――テレビは発売しないのですか。

シー 「スクリーン」という観点からいえば、テレビをラインアップの一つに追加することは十分に考えられます。ただ、今は検討段階にも入っていない。「テレビの可能性を模索している段階」と理解してもらえるでしょうか。