「日本一おいしい給食」と「食べ残しゼロ」を目指したさまざまな取り組みが注目を集める、東京・足立区の給食。

区の調べによると、平成20年から8年間で、小中学校における給食の残菜率は11.5%から4.2%に減少。その数値からも、大きな成果が見てとれます。

子どもの食習慣や好みは十人十色。そんな中、食べ残しを出さないための秘策とは―?

足立区蒲原(かばら)中学校栄養教諭の紺野朋子さん、足立区教育委員会 学校教育部学務課「おいしい給食」担当の渋谷敏さんにお話を伺いました。

生徒との会話に改善のヒントが隠れていることも

この日のメニューは、小松菜パン、ペンネのミートソース焼き、小松菜サラダ、豆腐と卵のスープ、牛乳。

だしを含め、一から手作りされた給食は、またたく間に生徒さんたちのお腹の中へ…。

紺野朋子さん(以下、紺野)「私は、子どもが給食の時間を心待ちにしてもらえるように、献立を作る段階から、何をしたら喜んでくれるか、楽しみの時間になるのかと考えながら仕事をしています。

ヒントは、給食の時間の巡回(※)にあったりします。意外なヒントが隠されていたり、核心をついていることもあるんです。
※蒲原中学校では毎日給食の時間に、栄養教諭が各教室を回っている

例えば、標準レシピをもとに缶詰の桃を使った焼き菓子を作って出した時、子どもたちはあまり食べなかったんですね。どうしたのかと思って生徒に聞いたら、『このお菓子には桃は合わない』と言うんです。『リンゴではどうかな』と言ったら、『じゃあ次はそれで出して』と。

それで、次の機会にリンゴで作って出してみたところ、グンと食べるようになったんです。そういった話も聞けたりするので、時には給食では実施が難しいことを言われたりもしますが、子どもたちの意見は真摯に受け止めるようにしています(笑)」

見た目を華やかに。回数を重ね、徐々になじみを増やす

紺野「やはり食材は見た目を華やかに、いろいろな色合いのものを使うようにしています。

本当は、例えば小松菜なども、お浸しのように素材そのものを味わうメニューを出したいのですが、そこは抵抗があるようなので、今日のメニューのように、ゆでて刻んだものをサラダの中に入れたりしています。

子どもたちは給食を見ると、『今日の給食、全部食べられそう』と言います。『おいしそう』というよりは『食べられそう』というふうに、自分の食の経験値から、かなり見た目で判断しますね」

渋谷敏さん(以下、渋谷)「小学校で栗ご飯を出したときに、どういう味かわからないから、食べずに見ている子がいた、というような話も聞きます」

紺野「実際食べてみないとわからないですし、食べてみたら予想と違っていたり、裏切られる部分ってあるじゃないですか。でも、子どもたちはまだガードが固いというか。だからひと口でも食べようね、と言っています。

なじみのあるものにするために、同じ食材を回数を重ねて出したりもします。食も体験ですので、いろんな味を食べて、いろんな経験をしてほしいなと思います」

残菜率のデータをもとに原因を分析、献立作りに反映

紺野「足立区の場合、各学校で給食の『残菜率』を記録しています。その数値は、その日の気候や子どもの欠席数などで増えたり減ったりするので、それだけで100%判断できない部分はあるのですが、1つのデータとして、数字をとっています。