一応、この5話までの流れをざっくり振り返っておくと、まず彩(菅野美穂)と雅人(ARATA)の結婚式の直前、直子(榮倉奈々)は雅人に告白している。ずっと男性として好きだったこと。その気持ちを彩は見抜いていること……。直子は、彩だけが自分の気持を知っていて雅人が知らないのは耐えられないと、自ら告白したのだ。この展開はなかなかインパクトがあった。

一方、彩は、直子の雅人に対する気持ちを知ってから、直子を精神的に追い詰めていた。それは、姪と叔父の関係という道徳的な問題を責めるというより、彩のプライドの問題、あるいは女性としてのタイプの違いにイラついてのものだった。

しかし、そんな強引に進めた結婚がうまくいくはずもなく、すぐに結婚生活は破綻を迎えた。それでも離婚を認めない彩と、精神的にボロボロになっていく直子のことを考え、雅人はアメリカへの留学を決意する。ここで8年の時間経過が組み込まれたのだ。

ということで、5話終了時点で、彩は病理学教室の准教授、直子は雅人と同じ消化器外科の医師、雅人も経験豊富な外科医となっている。

ちなみに、5話では留学することを決意した雅人と直子の間で、濃厚なキスシーンもあった。叔父と姪のキスというシチュエーションではあったけど、そこに至るまでの心理描写に時間をかけていたので、そんなにエグい印象でもなかった。今思えば、このシーンを成立させるために、2人のカツラ装着時期が長かったのかもしれない。

とりあえず現在は、8年の間に直子にも康志(溝端淳平)という恋人ができ、彩も雅人との正式な離婚を考え始めているという状態。雅人の帰国によって、改めて直子・彩・雅人の関係がどうなるか、というのが今後の見どころだ。大石静のインタビューによると、後半の雅人は自分の意思をハッキリと示す男に変わっていくらしいので、直子の真っ直ぐな愛にどう対処していくか、ちょっと注目してみたい。

なんか、こうやってあらすじを書いていくと、単なるエンタメ重視のドロドロ恋愛モノという印象になってしまう感じ。でも、必ずしもそうではない。ラブストーリーではあるけど、2人の対照的な女性の生き方の物語でもある。彩も決してイヤな印象だけの女性ではないし、直子に対する攻めも、あざとい描写だけで表現しているわけではない。

むしろ、個人的には今後の彩の描き方に一番興味がある。そういえば、大石静の前作『セカンドバージン』でも、夫を取られた側の万理江(深田恭子)の描き方が最後は印象的だった。……あ、もちろん映画ではなく、NHKの連ドラの話ね。映画しか見てなくてガッカリした人は、全10話のドラマをじっくり見ると本当の面白さが味わえると思う。

いずれにしても、『蜜の味』はやっと榮倉奈々とARATAのカツラが取れたので、これからはかなり見やすくなると思う。カツラ問題で今ひとつハマれずにリタイヤしてしまった人も、試しに戻ってきてみるといいかも……。『セカンドバージン』のるい(鈴木京香)と万理江のように、直子と彩、どちらもあっぱれな終わり方をしてくれそうな気がする。

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。

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