左から江波杏子、成海璃子 (撮影:源賀津己) 左から江波杏子、成海璃子 (撮影:源賀津己)

フランスで発表され、世界40か国でベストセラーとなった物語『100歳の少年と12通の手紙』が、日本の舞台に初登場する。日替りキャスト全12組のうち、成海璃子と江波杏子のペアに、稽古場で作品の印象を訊いた。

物語には、余命わずか12日と宣告された10歳の少年オスカーが登場する。普通なら本人も周囲も希望を見失って当然の状況だが、病院ボランティアを務める老婦ローズの態度は違っていた。思考停止するのではなく、残された時間はできるだけ能動的に過ごしたほうがいい。ローズが少年に提案したのは、「1日を10年と考えて生きること」。その教えは、オスカーの心を確実に動かしていく。

作者エリック=エマニュエル・シュミットが投げかけるのは、いかに生きるか、という根源的なテーマだ。長さに違いはあっても、命に限りがあるという点では、誰もがオスカーと変わりない。「本当にすごい作品だと思います。心にすんなりと入ってくるんです」とオスカー役の成海が言えば、ローズ役を演じる江波も「読んでいて、ものすごく解放されます。書かれていることすべてが素晴らしいと思います」と絶賛の言葉を惜しまない。

舞台上では、元東京バレエ団の中島周が平山素子振付によるダンスを披露し、前嶋康明のオリジナル曲をヴォーカルグループが生で繰り広げる。演出の鈴木勝秀が目指すのは、バレエの手法を使った“観る朗読劇”だ。「音楽によって引き出される感情があると思うので、本番が楽しみです」(成海)。

江波は「“演じずに、ただ読んでください”“目と目を合わせないように”という演出なんです。役と役ではなく、まさに私と成海さんの魂と魂が触れ合う感じ。水のように清らかで素直な成海さんとご一緒できるのは、とても新鮮です」と話す。成海にとっても今回の舞台は新しい体験のようだ。「江波さんの読み方が変われば、こちらのリアクションも自然と変わります。毎回同じである必要はなくて、計算ではなく、感情のまま素直に読むことが大事だということがわかりました」。今その瞬間を大切にするということ。まさにそれは作品に込められたメッセージと同じだ。

アトリエ・ダンカンプロデュース『100歳の少年と12通の手紙』は、9月12日(水)から23日(日)まで東京グローブ座にて上演。キャストは日替りで、公演日順に、多田直人&柴田理恵、小西遼生&杏子、古川雄大&萩野志保子、成海璃子&江波杏子、新納慎也&彩吹真央、宮野真守&萬田久子、竹財輝之助&秋野暢子、山崎育三郎&涼風真世、川平慈英&香寿たつき、松岡 充&木の実ナナ、安倍なつみ&木村多江、池松壮亮&南 果歩が出演する。