細川藤孝役の眞島秀和

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」。12月20日放送の第三十七回では、将軍・足利義昭(滝藤賢一)が織田信長(染谷将太)に敗れ、ついに室町幕府が崩壊。このとき、共に幕府を支えてきた兄・三淵藤英(谷原章介)とたもとを分かつことになったのが、細川藤孝だ。若い頃に知り合った主人公・明智光秀とは、以後も盟友として深くかかわっていくことになる。演じる眞島秀和が、撮影の舞台裏や光秀役の長谷川博己の印象などを語ってくれた。

-第三十七回で藤孝は、兄の三淵藤英とたもとを分かつことになりましたね。

 兄の三淵の方は、物事の筋道を大事にして、そこに殉じていったような人物なのかな…という印象があります。それに対して、藤孝の方がもっと現実的な人だったのではないでしょうか。

-三淵役の谷原章介さんとは、現場でどんなお話を?

 兄弟とはいえ、若いときから三淵と藤孝は、考え方がちょっとずつ違っていたところがあるんです。だから、谷原さんが「藤孝ってこういう感じだよね」と何気なく言ったりする一言が、僕の中では「なるほど」とヒントになったりする。そういう意味で、「助かるな」と思いながら演じていました。

-藤孝を演じる上で、どんな準備をしましたか。

 藤孝について書かれた本を読んだりはしました。ただ、撮影に入る前にプロデューサーや監督から、「真っすぐで、熱い志を持った人物像にしていきたい」と伺っていたので、演じる上ではそれがベースになっています。

-藤孝とご自身が近いと感じる部分、または共感できる部分は?

 自分に近いかどうかは分かりませんが、描かれ方として、複雑な状況をシンプルに捉えて判断を下していくイメージがあります。そういうところは、すごく共感できるというか、「いいな」と思っている部分です。

-演じる中で藤孝に対する印象が変わってきた部分はありますか。

 演じる前は、オールマイティーにいろんなことができる人物と捉えていました。でも、実際に撮影に入ってみると、若いときは理想に燃える熱い志を持った人物が、徐々にバランス感覚に秀でるようになってきたのかな…というふうに変わってきました。

-藤孝の細川家は、戦国を生き残り、現代まで続いていますが、どんなイメージを持っていますか。

 「“家を存続させること”を着実にやってきた」というイメージで、「したたかで、たくましい」という印象があります。ただそれは、僕が戦国時代を渡り切った人物を演じているせいかもしれませんが。「本能寺の変」後の光秀への対応については、さまざまな意見があると思いますが、藤孝が非常に冷静な面を持っていたということではないでしょうか。

-これが三度目の出演となる大河ドラマに対する印象は?

 僕は米沢出身ですが、大河ドラマの入り口になったのが、子どもの頃に見ていた「独眼竜政宗」(87)です。その次の「武田信玄」(88)も全話見ていましたし、歴史好きになったきっかけが、大河ドラマでした。そういう思い出があるせいか、自分の中では、何か特別な作品に出させてもらうような感覚があります。

-歴史好きとのことですが、細川藤孝を演じてみた感想は?

 もちろん名前は知っていましたが、どうしても山形や会津といった地元の武将の方に思い入れが強く、京都方面のことについては詳しくなかったんです。子どもの頃は、戦国時代を題材にしたテレビゲームにもハマりましたが、プレーするときに、どうしても地元の武将を選んでしまって(笑)。だから今回、あまり縁のなかった人物のことを知ることができましたし、京都方面の状況が「こんな複雑なことになっていたんだ!」と勉強にもなりました。

-眞島さんから見た今回の光秀の印象は?

 謎の多い人物なのでフィクションの部分が多いと思いますが、フットワークも軽いし、いろんな人物をつないでいった人なんだな…と。長谷川くんが演じていることもあって、僕の中では、ひょうひょうとしていながら、爽やかなイメージになっています。

-長谷川さんとは現場でどんなやりとりを?

 基本的に、芝居の話はほとんどしません。たまに、長谷川くんの芝居の後に僕のせりふが入るようなときに「ちょっとタイミングずらした方がいい?」みたいなことを話したりする程度で。ただ、現場はものすごく楽しいです。長谷川くんとは同い年の上に、序盤から2人のシーンも多かったですから。お互いに刀を抜いて対峙(たいじ)する初対面の場面はもちろん、水あめを持って光秀のお見舞いに行く場面は、僕のクランクイン初日で長いせりふのやり取りもあったので、今でも印象に残っています。途中から滝藤くんも加わったので、「同世代でもみんな違う個性があって、本当に面白いな…」と思いながらやっています。

(取材・文/井上健一)