■ウェブ漫画――利益なしでもこだわる理由は?

次に佐藤氏の会社(有限会社 佐藤漫画製作所)が運営するオンライン漫画販売サイト『漫画onWeb』の現状を語ってもらった。

「今はウェブスタッフが2名いまして、サーバー費用とか保守管理のランニングコストがあります。これが売上とほぼ一緒で、儲けはないですね」

2010年に『ブラックジャックによろしく』無料公開でネットの話題をさらい、現在も「ネーム大賞」などで新人作家の発掘・育成を続ける『漫画onWeb』だが、利益はまったく出ていないという。

佐藤氏以外に作品を公開している作家さんの収入についても「全然それだけで生活できるほど(報酬を)お渡しできてないですね。数千円~数万円ほどで、月に10万円を超える人はなかなかいないです」と率直な答えが返ってきた。

ただでさえ連載を抱えている忙しい身なのに、儲けにならないウェブにこだわる理由は何なのだろうか? またも失礼を承知で率直に尋ねてみた。

「紙の媒体はダメになって、これから漫画もウェブに移行していくと思っています。たぶん僕は、電子書籍がどのくらい影響力を持っているか、どういう市場なのか(漫画onWebの運営を通じて)ほかの作家さんよりも分かっているので、今後どんなふうになっても動きが取りやすいと思います」

さまざまなデータが物語っているように、紙媒体の市場はここ10年以上も連続で縮小中だ。漫画の出版物に限れば平成7年がピークだと言われている。先細っていく紙の漫画と心中することなく、自身に、そして漫画家を志す人たちに作品発表の場を確保する“先行投資”が『漫画onWeb』ということだろうか。

まだ同様の試みをしている漫画家は少数だが、いずれ漫画をデータとしてウェブで発表・販売するのが当たり前になったら、印刷会社や流通業者、街の書店などが受ける影響は決して小さくないだろう。とりわけ売上高の約20%(2009年統計)をコミック単行本に頼っている一般書店にとっては深刻な話である。

「書店さんにはお世話になってきたんですけどね……。時代に合わなくなったら淘汰されちゃうんだろうなと思ってます」

若干の寂しそうなニュアンスを含んで語る、佐藤氏の胸中も複雑なようだった。

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