22番を演じた川栄李奈(左)とジョーを演じた浜野謙太

 ジャズ・ピアニストを夢見る中学教師のジョー・ガードナーは、マンホールに落ちてソウル=魂の世界へ入り込む。ジョーは、地上へ戻る方法を探るため、人間になることを拒み続けるソウルの22番と共に冒険の旅に出る。ディズニー&ピクサーの最新作『ソウルフル・ワールド』が、12月25日からディズニープラスで配信された。本作の日本語吹き替え版で、ジョーを演じた浜野謙太と22番を演じた川栄李奈に話を聞いた。

-最初に映像を見た時、どう思いましたか。

浜野 実際のニューヨークの街並みや、人々の営みが、とても細かく描かれていて、ピクサー作品としてはちょっと意外な感じがしました。でも、その一つ一つがすてきで、美しい街だなあと思って、目を奪われました。

川栄 まず、映像がきれいで、すごいと思いました。それぞれのキャラクターも、みんなかわいらしくて、クスッと笑えるシーンもあって。でも、ちゃんと人生や大切なことについても教えてくれる作品だと思いました。

-ドラマ「とと姉ちゃん」では夫婦役でしたが、今回、お互いが相手役だと知ったときはどう思いましたか。

川栄 知ったのは、私の方が遅くて、アフレコに行ったときに、「ジョー役は浜野さんです」とだけ言われて、「あーそういえば…」みたいな感じで言われたんですね(笑)。最初は「ハマノさんって誰だろう、声優の方かな」と思ったのですが、「浜野謙太さんです」と言われて、「えーっ、ハマケン」みたいな感じで(笑)、とても驚きました。それですぐにメールをしました。

浜野 事前に、予告映像などにアフレコをしているときに「22番が川栄ちゃんだったら面白いな」と思いました。それで、実際にそうだと聞いたときは、爆笑しました。

-実際にアフレコをやってみて、いかがでしたか。

浜野 「川栄ちゃん、めっちゃうまいな。すごいな」と思いました。22番にしか聴こえないし、いたずらっ子っぽい感じも端々に出ているし…。アフレコは別々だったので、一緒にやっていたらもっとよかったのに、というちょっと悔しい気持ちもあります。

-それぞれが演じたキャラクターの印象は?

浜野 ジョーは、やっぱり自分と重ねてしまうところがあって、自分にもこういう部分はあるなと。正直なところ「俺だ」と思いました。夢に向かってばく進するあまり、人との出会いや、音楽の大切さや切なさを置いてきてしまうところや、周りにすてきなお母さんや友達もいるのに、それを忘れがちになるところなどは、「俺みたいだな」と思って、胸に刺さりました。自分も、もっと時間や人に感謝するべきだと感じました。

川栄 22番は、まず、見た目がとてもかわいいと思いました。生意気なところもありますが、それもいとおしいなと。演じていくうちに、22番が変わっていく様子を見ながら、自分もささいなことですごく楽しいと思える瞬間があるので、そういう部分は重なって見えるところもありました。

-浜野さんはミュージシャンでもあります。今回、ジャズ・ミュージシャンを夢見るジョーを演じてみて、どう感じましたか。

浜野 とても光栄でしたし、うれしかったです。結構うなずける部分があったので、自分がミュージシャンでよかったなと思いました。ジョーが演奏に集中してゾーンに入ったり、弾いているうちに、どんどんヒートアップして、ものすごい演奏をするところや、ライブの後に「すごい演奏だった」と興奮する様子は、自分がミュージシャンをやっている中で、分かることだったので、「俺でよかったな」と思いました(笑)。その、“ミュージシャンあるある的なこと”が、誰が見ても「なるほど」と思えるように描かれているので、すごくありがたい感じがしました。

-好きなシーンを教えてください。

浜野 たくさんあるなあ。特に理髪店のシーンが好きです。面白い友達がいるのに、彼らの話も聞かずに、ジョーは自分の音楽の話しかしないので、いつもここで浮いていたんだなと。あとは、ジョーがピアノを弾く前に、譜面台に、自分が持っている小物を一つ一つ置いていくシーンは、バックの音がすごく気持ち良く聴こえてきて、その後のピアノの音につながっていって…。しびれました。

川栄 ネタバレになるので詳しくは言えませんが、ラストシーンです。映像がすごくきれいなので、映画館みたいに部屋を暗くして見てもらえたらいいと思います。

-実際に演じてみて、難しかったところ、楽しかったところを教えてください。

浜野 ジョーは早口なのでとても難しかったです。英語の情報量の多さはすごいな、あんなに早口でしゃべる日本人はいないよな、と思いました(笑)。でも、何とか頑張って演じました。それが勉強になったし、面白かったです。また、22番とのわちゃわちゃした感じが最高に面白かったです。

川栄 難しかったのは、声のトーンでした。「もっとかわいらしく」とか言っていただいたのですが、それがとても難しくて。22番の憎たらしいところと、かわいらしいところをミックスした感じを出すのがとても難しいと思いました。楽しかったのは、アフレコ中に、とてもおいしいあめを頂いたので、「おいしい」というせりふが正直に言えました(笑)。

-お気に入りのピクサー作品は?

浜野 『ソウルフル・ワールド』とはちょっと違う感じですが、『2分の1の魔法』(20)はすごかったです。戦いのシーンなどはダイナミックなのに、最後に泣かせるという…。圧倒されました。

川栄 『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)です。最近また見たら、子どもの時とは考え方や見方が違うので、改めて深くていいお話だなあと思いました。例えば、『ソウルフル・ワールド』を今の子どもが見て、5年後や10年後にもう一度見たら、また違った観点から見られると思います。

-最後に、この映画の見どころをお願いします。

浜野 ソウルや生まれる前の世界の話みたいなことを聞いて、身構えがちになるとは思いますが、映画の中に散見する音や、ニューヨークの街並み、黒人コミュニティーの温かさ、かっこいい音楽といった断片を、全身に浴びて楽しんでいただければと思います。

川栄 22番の「人生ってそんなに大切なものなの?」というせりふがありますが、今、コロナ禍で皆さんのテンションが下がって、きらめきも見付けにくい中で、この映画を見たら、「みんな悩みを持っているんだ」「一人じゃないんだ」と感じて、「自分も頑張ろう、日々を大切に生きよう」と思えるのではないでしょうか。

(取材・文/田中雄二)