2012年8月は、携帯電話の販売動向に三つの変化があった。一つ目のトピックスは、スマートフォンの販売比率がさらに上昇したこと。量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、8月の携帯電話全体の月間販売台数に占めるスマートフォンの割合(スマートフォンの販売比率)は、7月より2.9ポイント増え、76.4%に達した。週次集計でも、注目機種の発売が重なった8月第1週(8月6~12日)には、8割突破目前の79.0%まで高まった。

●8月もスマートフォンの売れ行きは好調、携帯電話全体の76.4%を占める

携帯電話全体の販売台数は、前年同月比95.0%と前年をやや下回ったが、前年割れが続く従来型携帯電話とは対照的に、スマートフォンに限ると、前年比131.5%と、依然として伸び続けている。キャリアショップを含め、関東エリアの数店舗を見て回ったところ、8月は、MNP利用や複数台同時購入などで、1~2万円程度の端末代金値引きやキャッシュバックを行っている店舗が多かった。端末の魅力に加え、活気のある店頭の様子や「買いどき」だと感じさせるさまざまな販促キャンペーンが販売台数の底上げにつながった。

●auの「iPhone 4S」が初めて実質トップに! 1位から4位までは僅差

続いて、機種別の携帯電話ランキングをみていこう。SIMフリー端末を含む携帯電話全体の2012年8月の販売台数1位は、7月に続いて2か月連続でNTTドコモのAndroid搭載スマートフォン「GALAXY S III SC-06D」が獲得。ドコモは、発売日に東京都内の量販店で発売記念イベントを実施するなど、夏モデルの主力機種として、シリーズで初めておサイフケータイに対応し、約4.8インチの大画面ディスプレイを搭載した「GALAXY S III SC-06D」を強くプッシュしていた。今のところ、総販売台数は昨年6月に発売した「GALAXY S II SC-02C」を下回っているが、ドコモのLTEサービス「Xi(クロッシィ)」対応機種に限ると、「ARROWS X LTE F-05D」に次ぐ歴代2位につけている。もちろん、今年のドコモの夏モデルのなかではダントツのNo.1だ。

2位は同じくドコモのAndroid搭載スマートフォン「ARROWS X F-10D」、3位はソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」の16GBモデル、4位はauの「iPhone 4S」の16GBモデルだった。8月発売の注目機種「Xperia GX SO-04D」は5位に、タッチパネルの感触を工夫し、通常より安い専用のパケット定額サービスを用意した「らくらくスマートフォン」は6位にランクイン。「iPhone 4S」を除くと、1位から12位まで、すべてドコモの端末が占めた。

8月の二つ目のトピックスは、auの「iPhone 4S」の躍進だ。通常は容量ごとに分けてカウントしている「iPhone 4S」をキャリアごとに合算すると、初めてauの「iPhone 4S」がトップに立った。とはいえ、小数点第2位を四捨五入すると、auの「iPhone 4S」(7.13%)、「GALAXY S III SC-06D」(7.11%)、ソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」(7.09%)は、いずれも7.1%で、差はほとんどない。4番手の「ARROWS X F-10D」でも、1位グループとわずか1ポイント差の6.0%と、上位は久し振りに大接戦だった。

●スマートフォンのキャリア別シェアトップはドコモ

「iPhone 4S」について、キャリア・容量を区別せずに1機種として集計すると、2011年10月から2012年8月まで、11か月連続で実質トップだった。この1年弱、どの機種も追い抜くことができなかった。ただ、スマートフォンに限ったキャリア別シェアでは、iPhoneを取り扱っていないドコモのシェアが飛び抜けて高く、8月は6割を超えた(詳しくは<OS別シェアでAndroid端末に押されつつあるiPhone、次期モデルで挽回なるか?>を参照)。以前に比べ、伸び率は鈍化しているものの、スマートフォンの販売台数は、約2年前の2010年10月を1とすると、7月・8月とも約3倍に増え、市場規模は着実に拡大している。8月の三つ目のトピックスとして、市場拡大とキャリア別シェアの変化を挙げたい。ドコモはMNPによる転出超過が続いているが、販売台数という観点では、「一人負け」どころか、むしろ「一人勝ち」の様相だ。

auとソフトバンクモバイルは、iPhoneの比率が高く、トップ10をみると1位と2位以下の差が大きい。ドコモでも、一部の機種に人気が集中する傾向があるが、時期に応じてNo.1機種が入れ替わり、例えば、「GALAXY S III」と「GALAXY Note」、「Xperia acro HD」と「Xperia SX」のように、たとえ同一メーカー・同一ブランドでも、シリーズのなかでのポジションによって売れ行きに差が出ている。使い方によっては問題にならない「防水・防塵」を除いて、主な機能がひと通り揃った「全部入り」のハイエンドモデルが好まれる傾向は、ケータイ全盛期とあまり変わっていない。

日本時間の9月13日、アップルは、iPhoneの新モデル「iPhone 5」を発表した。発売日は9月21日で、すでに予約受付がスタートしている。国内では、「iPhone 4S」同様、ソフトバンクモバイルとKDDI(au)の2社が販売する。普及が進み、スマートフォンからスマートフォンへの買い替えユーザーも増えているなか、画面サイズの大型化、長年使われていたDockコネクタの廃止・Lightningコネクタの採用など、これまでの資産の一部を切り捨てながらも、2世代ぶりにフルモデルチェンジした「iPhone 5」がどのようなインパクトを与えるのか、今後の動向に注目したい。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。