約450組が出展した「Maker Faire Tokyo 2017」に出展していた、AIを駆使したきゅうり仕分けマシン

何でも自分で作ってしまおう……ものづくりの祭典、Maker Faire Tokyo 2017が8月5日と6日の2日間、お台場の東京ビックサイトで開かれた。08年に始まり、今年で13回目を数えるMaker Faire Tokyo。今年は約450組が出展し、電子工作やロボット、楽器やアートなどありとあらゆるジャンルで思い思いのものづくりの成果が大集結した。実用的な作品もさることながら、何の役に立つのか首をひねるようなウケ狙いの出展も数多く、素直に楽しめるイベント。子ども連れの家族の姿もあちこちで見られた。

今年のMaker Faire Tokyoの大きな特徴は、マイコンボードの定着と広がりだろう。定番のRaspberry Piや激安のIchigoJamを使って動きを制御するロボットやIoT機器などの出展はもはや当たり前。さらに今年は、ASUSのTinker BoardやイギリスBBCのmicro:bitなど、新たなマイコンボードも会場で披露され、Makerたちの心をくすぐった。しばらく前なら数万円数十万円と高価だったコンピュータが、数千円で誰でも利用できるようになってきたことで、コンピュータ制御を取り入れたものづくりをしやすい環境が整ってきた。

また、2020年から小学生向けプログラミング教育が始まるのを契機に、子ども向けの出展も目立った。特に、教育用プログラミング言語Scratchを利用した「子どもプログラミング喫茶」、動きを自由にプログラムできるタミヤの「カムプログラムロボット工作キット」に先行販売には、熱心な子どもたちが集まっていた。

Maker Faire Tokyoは、特に子ども向けではなくても、子どもの心を刺激する展示や出展にあふれている。惑星探査に使われるようなロボットを興味津々に眺めたり超小型ホバークラフト体験ではしゃぐ子どもたち。こんなところからものづくりの楽しさに目覚めていくのだろう。

実用性の高い出展も多い。常連とも言える「きゅうり仕分け3号機」は、きゅうり農家Workpilesさんが制作したもので、病気の有無や曲がり具合などをディープラーニングの応用で判定、9等級に仕分けする。きゅうりを痛めないよう、昨年まで実装していたベルトコンベア式の仕組みを改め、ディスプレイ上に置くだけで判定する仕組みに進化させた。

超小型の真空管「Nutube」を開発したコルグは、Nutubeを応用したヘッドホンアンプキットを出展。なんと9Vのバッテリ2本で動作し、真空管ならではの丸みがあって骨太なサウンドが特徴。ケースは付属しないが、真空管アンプを持ち運べる大きさにまとめた。コルグのNutubeは、液晶が普及する以前、電卓などで数値などを表示するために使われていた蛍光表示管の構造を応用した真空管。音楽の世界では、独特のサウンドを生み出す部品として真空管を好んで使うことも少なくない。

音系では楽器の出展も多い。演奏しながらその場で販売していたのがSlaperoo Percussionが出展した「スラップスティック」だ。エレキギター風の楽器だが、形状は一本の棒。弦の代りに薄い金属製の板を抑えつつ叩いて演奏する。エレキベース風の音で、うまく弾けるとなかなカッコいい。興味を持った来場者が次々と購入していた。

渋い、ナンセンスな展示もMaker Faireの見所。なかよしさんが出展した「拍手をあびるシャワー」は、壁面に蛇口のハンドルと頭上にシャワーヘッド状のものがセットになった展示だ。拍手の音がシャワーのように降り注ぎ「自分に拍手を贈ることができる」装置だという。ハンドルをひねるとシャワーヘッド状の形状のスピーカーから拍手の音が流れる、という仕組み。頭上から拍手を浴びながら笑ってしまう展示だ。

実用的なのかウケ狙いなのか判断に迷う展示も楽しい。常に人だかりが耐えなかったのは坂井義治(めだか部)さんが出展した全自動眼鏡洗浄ロボ「洗っとく子ちゃん」だ。3軸関節ロボットを使った筐体に眼鏡をセットすると、器用に眼鏡の角度を変えながら洗剤を振りかけ、水洗いし、ブロワーで乾かすというもの。細かな動きがコミカルでついつい見入ってしまう。

年々勢いを増すMaker Faire Tokyoでは今年も、ものづくりへのパッションで満ちあふれていた。この中から、ソニーやパナソニックを追いかける、次世代の企業が生まれてくるに違いない。(BCN・道越一郎)