個人向けパッケージソフトの販売が、冬の時代に入って久しい。家電量販店だけでなく、ディストリビュータもビジネスが縮小している。こうした状況のなかで、ラネクシーは、パッケージ販売モデルの抜本的な変革に取り組み、さらにネット販売の可能性も探っている。法人と個人の両ビジネスに携わる第一ソフトウェア事業本部長の竹田昌生常務取締役に話を聞いた。(取材・文/佐相彰彦)

◎プロフィール

竹田昌生(たけだ まさお)

1958年8月19日生まれ。福岡県出身。81年、松下システムエンジニアリング(現NTTデータMSE)に入社し、SEとして経験を積む。その後、フリーを経て、86年にソフトウェア・パブリッシング会社に技術職として入社。営業・マーケティングを担当する。02年、合併に伴ってプロトンの常務取締役に就任。08年、ラネクシーに社名変更。現在、常務取締役として第一ソフトウェア事業本部長を兼務する。

●パッケージ販売モデルを変革 ネット販売の可能性を探る

Q. 第一ソフトウェア事業本部の売り上げに占める個人向けビジネスの比率は?

A. 10%程度だ。今は、法人向けのビジネスが主流で、前年比2.5倍以上の売り上げを記録するソフトがあるなど、順調に伸びている。一方、個人向けソフトは製品数が減り、厳しい状況にあることは否定できない。

Q. そのなかで、個人向けのビジネスをどのように組み立てていくのか。

A. 手法は二つある。一つは、製品名の認知度をマーケットで高めていくために、低価格で大量に販売して普及を促すこと。もう一つは、製品数を絞って一定の収益を確保することだ。今、当社の個人向けビジネスは、安売りもせず、製品も絞らないという中途半端な状況にある。これを打破するために、社内やメーカーとの話し合いを進めているところだ。本来は慎重に判断すべき事柄だが、ビジネスにスピードが求められている時代に、中途半端な状況を放置してはいられない。どちらの手法を採るのか、早急に決断する。

Q. ビジネスの方向転換は、なかなか勇気のいることだと思うが……。

A. 正直いって、無理に伸ばそうとすると、さらに減少するというスパイラルに陥ってしまう。家電量販店からも、返品が多い。この環境のなかで、ディストリビュータの立場で強引にビジネスを拡大するのは危険。製品名を知らしめるか、収益性の高い製品に絞るか、二者択一しかないと考えている。

Q. その選択は、個人向けビジネス全般にわたることなのか。

A. いや、パッケージソフトの店頭販売についてだけだ。ネット販売については、自社の通販サイトである「ラネクシーオンラインショップ」を強化するなど、さらに力を入れる。

Q. 具体的な策は?

A. 扱っている製品の組み合わせ販売だ。利用シーンを想定し、適した製品をいくつか紹介する。これは、メーカーの通販サイトではできない。さまざまなメーカー製品を扱っている当社だからこそ実現できる施策だ。また、大手通販サイトに新たな用途を提案して、取扱い量を増やしてもらうことにも取り組む。このような取り組みで、売り上げの大きな伸びは期待できないものの、利益を確保していく。

Q. 家電量販店の通販サイトとパートナーシップを組む可能性はあるのか。

A. 十分にあり得る。また、家電量販店には実店舗と通販サイトの両方をもつ強みを当社でも模索し、提案していきたい。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年9月24日付 vol.1449より転載したものです。

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