“伝わる”企画書とは

情報に頼ってしまうと、企画自体にオリジナリティがなくなり、曖昧な印象になってしまうことも多い。「もっともらしいデータをいくら並べても、それでは『この人(会社)と仕事をしたい』と思わせることはできない」と高橋さん。“伝わる”企画書とは、どんなものなのか。

「どんな企画か、先方にどんなメリットがあるのか、その実現のために自分(自社)はどう動けるか、というメッセージが明確で、1枚の紙にまとまるような簡潔な企画書が好ましい。資料やパワーポイントに頼ってしまうのは、要点が整理されておらず、企画に自信が持てないからです。究極のところ、口頭の説明だけで出資を引き出すアメリカのベンチャー企業のように、形だけの企画書なら捨ててしまうのがいい。各種の数字や過去の実績など、目に見えるデータは確かに必要ですが、“先方に求められたら提示する”くらいで十分なケースがほとんどです」

それでは、相手に伝わるシンプルな企画書を作るために、どこから始めればいいのか。高橋さんは思考整理の基本的な考え方として、「4C」というポイントを挙げる。もともとはダイヤモンドの価値をはかるための基準で、「Clarity(クラリティ:透明度)/Color(カラー:色)/Carat(カラット:重さ)/Cut(カット:形状や研磨などの仕上がり)」の頭文字を取ったものだ。

■整理の4原則
1.見通しを立て、
2.ものごとをカテゴリ分けし、
3.それぞれの重要度を計って、
4.最後にいらないものを捨てる。 
複雑な思考を整理し、企画書をスマートにするためのポイントとして覚えておきたい。
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「企画や問題解決を考える上では、まずは仮説を立てて、『見通し・明瞭さ(クラリティ)』を確保すること。そして、それを実現するための手法や関連情報などを『色分け(カラー)』して整理し、それぞれの『重要度(カラット)』を計る。そして、不要なものを思い切って『捨てる(カット)』のがポイントです。重要度が低い情報やデータから削っていき、考えをそぎ落としていくことで、最初のポイントであるクラリティが高まるという相乗効果が期待できます」

高橋さんが提示するのはあくまで「考え方」のフォーマットであり、企画書作成のメソッドではない。インターネットで検索すれば、企画書やパワーポイントの作成例は、いくらでも出てくる。しかし、それを安易にコピー&ペーストしてしまうのは考えものだ。

「情報がきれいに整理されているだけでは、理解は得られても、共感を呼ぶのは難しい。熱意を持ち、自分の言葉で語らなければ、せっかくのプレゼンテーションも聞き流されてしまうことが多いんです。プレゼンに限らず、年齢を重ねると“人を動かす”ことが仕事になります。若いうちから自分の言葉、自分なりの企画書作りを追求しておきたいところです」

“見本”や“お手本”がなければ不安に思う人もいるかもしれないが、人に伝わる企画書を作るポイントはシンプルだ。「4C」を意識して、メッセージを明確にすること。そして、なるべく少ない枚数で、実感のこもった自分の言葉で表現すること。これを前提にするだけで、これまでの企画書はガラリと変わるはずだ。