大人社会で“マジメ”な親ほど、段取りから外れることが許せない?

竹中:【母乳110番】での相談員ママたちの話に戻りますが、
「子育てほど、当事者や関係者とそうではない人の間に温度差がある分野はないよねぇ」
「関係ない人は徹底的に冷たいもんね。だから時間差通勤も時短もフレックスも育休も人ごとでさ~、ちっとも理解が進まないんだよねぇ」という話になりました。

そうしたら、「当事者の親が、あたたかいとは限らないよ」というコメントが飛び出したんですね。

彼女が言うには、「子どもが保育園の時だったんだけど、子ども関係のイベントって、大体の流れは書いてあるけど、終了時間が読めなかったりするので、明確な時刻は書いてなかったりするじゃない?

そうしたら、プログラムを見たうちのパパが『こういう公的な集まりで終了時間が書いていないなんて、非常識だ』って怒り出したの。

保育士さんが『開始時間からこのくらいのタイミングで演技に移りますから、その後は子どもたちの様子を見ながらティータイム、あとは流れで後半に持っていきたいと思っていますので』って説明してくれたんだけど、全然理解しなくて『キチンと書くべき』ってずっと怒ってた」

「え~、ずっと怒ってたんだ」と周りのママたち。

「そう。会社とか普通の組織と同じつもりでいる人にとっては『予定が立たない』なんて考えられないことだったんだと思う。

何回かイベントに参加して子どもたちの様子を見ているうちに、子ども相手の集まりだとそういうタイムスケジュールの組み方しかできないんだ、だから終了時間を明記していないんだ、ということに気が付いてくれたんだけど。

でもそれ、3人目の時だった。やっと3人目で納得してくれたんだよ。いったい何年かかってるのよ、遅くない?」

これには一同、納得しつつも大爆笑。

さらにあらためて「公共の場での授乳」に話が及んで。

「『授乳室があるのだから、ちゃんと事前に調べておいて授乳室に行って授乳すればいい』って考える人も、きっと同じ傾向があるかもね」

「うん、そう思う。この問題って立場よりも、もしかしたら性格による方が大きいかもね」

という結論になったんですよ。

――保育園パパのエピソード、ちょっと笑ってしまいました(笑)。ママであるとか、パパであるという「立場」よりも「性格」、という側面はあるかもしれませんね。

マジメな「性格」で、大人の世界でキチンキチンと物事を進めてきたがゆえの「経験則」で計りがちというか。

竹中:お仕事などで得た「経験則」、子育てでもちろん役に立つこともありますが、でもそれをことごとく裏切って、予想の斜め上を行く生き物が「子ども」だというのが現実ですよね(笑)。

さぁここまできたら、解決の糸口が見えてきたのではないでしょうか。

子育ては苦手…と泣いていた私が「おっぱいとだっこ」を楽しめるようになるまで

『おっぱいとだっこ』(PHP研究所)より転載

竹中:こうすればああなると頭だけで考える「脳化社会」に生きる人達は予測がつかない事態が嫌い。だから予測がつかない自然そのもの!である「子ども」や不確定の連続!である「子育て」が苦手なんじゃないかな、と私は思っています。

同じように作物を育てても収穫量は同じにならない。恵みの雨が降ったり、日照りが続いたりが日常だった昔の人はきっと「自然と共に生きる=予測がつかないことを前提に生きていく」ことが普通にできていたのでしょうけれど、今は違う。

例えば仕事で新しいことを提案すると、普通は「どんな結果になるのか」と必ず見通しを聞かれる。「やってみないと分かりません」なんて言ったら相手にされないですよね。

「こうなれば、ああなるはず」というやり方が普通だと思い込んでいる人にとっては「どうなるか、やってみないと分からない」「反応を見ながらやっていくしかない」という世界は、ものすごく拒絶反応があります。