(画像左から)サントリーホール支配人 市本徹雄、サントリホール館長 堤剛 (画像左から)サントリーホール支配人 市本徹雄、サントリホール館長 堤剛

今年2月から閉館して改修工事を行なっていたサントリーホール。9月1日(金)のリニューアル・オープンに先立って内覧会が開かれ、リフレッシュした姿をひと足早くお披露目した。
同ホールはこれまでも10年ごとに一定期間クローズして大きな改修を繰り返してきたが、開館31年目の今回は過去最大規模。とはいっても、一見するとあまり変わっていない印象を受けるかもしれない。高評価が定着している音響や雰囲気をそのまま継承するのが改修の基本コンセプトだからだ。たとえば従来と同じ生地に張り替えられた座席シート。ウィーンのバックハウゼン社製の特注生地はすでに同社では生産できず、忠実に同じ素材・色・柄にするために、国内で新たに織ったというこだわりぶり。見た目を変えずに一新するというのは、実はなかなか贅沢なのだ。客席とステージの床材やロビーの絨毯も全面的に張り替えられている。もちろん外見が大きく変わった部分もある。内覧会で最も注目を集めていたのはトイレ。従来比で、男性用が小10+個室4、女性用が12室増えたから、休憩時間の列も少なからず改善されるだろう。

また、正面エントランス右奥に、大ホール客席まで段差なく繋がるバリアフリーの新エントランスが増設された。これは常設で、車椅子利用者はもちろん、誰でも自由に使うことができる。

音の面での大きな変化は、開館以来初めてという、パイプオルガンの全面的な大規模オーバーホール。この日デモンストレーションで演奏した鈴木優人さんによれば、「調律が素晴らしい!」とのこと。従来も大きな不満はなかったというが、予期せぬ澄んだ響きにあらためて驚いたそう。サントリーホールの顔ともいえるオルガンに、新たな命が吹き込まれた。

ホールはジュゼッペ・サッバティーニ指揮東京交響楽団のロッシーニ《荘厳ミサ曲》で再開すると、待ちかねたように注目公演が目白押し。30年目を迎えるサントリー音楽財団サマーフェスティバルや、例年は6月開催のチェンバーミュージック・ガーデン、新装のオルガンを堪能できるオルガン・カフェなど盛りだくさんだが、何といっても目玉はボストン交響楽団来日公演だろう。指揮者界の現代の巨匠の一翼を担う存在として最も注目されるアンドリス・ネルソンズが率いての公演は、1999年の小澤征爾以来、実に18年ぶりとなる現役音楽監督との来日公演でもある。2年連続でグラミー賞を受賞している新たな十八番のショスタコーヴィチのほか、ギル・シャハムとのチャイコフスキーの協奏曲や、ラフマニノフ、マーラーなど、充実のラインナップが、生まれ変わったサントリーホールに響き渡る。

取材・文:宮本明