<25~29歳・所有ブランドリスト>
男女ともに1位だったのは「ユニクロ」。ファストファッションが複数ランクインした。
※ブランドデータバンク調べ(2011年12月調査)
<25~29歳・好きなテレビ番組リスト>
男女ともに1位だったのは『アメトーーク!』。トーク・バラエティ番組が複数ランクインした。
※ブランドデータバンク調べ(2011年12月調査)

価値観の変化が生んだ「D消費」

家計の支出は、収入の変化にあまり左右されない衣食住などの「基礎支出」と、収入の変化を受けやすい「選択的支出」とに分けることができる。選択的支出はクルマや家電製品、インポートブランド、持家、海外旅行などの高額な耐久財やサービスへの支出だ。

「これまでの世代にとっては、選択的支出が増えていくことが豊かさの象徴でした。そのため、基礎支出を切り詰める一点豪華主義の消費も見られました。普段の日常生活を犠牲にして、非日常を楽しむ消費スタイルだったのです」

しかし、これは日本経済と自分の将来を楽観視できた時代ならではの消費スタイルだと、松田さんは言う。

「明日の見えない時代を生きるプレッシャー世代は、普段あまり使わない選択的耐久財などの商品サービスを購入したり、長期ローンを組んで日常生活を犠牲にするよりも、日々を楽しみたいと考えています。彼らは日常生活を充実するためのD消費には支出を惜しまないのです」

だから、公共交通機関での移動に不便さを感じなければクルマを買わないし、携帯電話のワンセグで事足りると感じれば大型液晶テレビは選ばない。家具やファッションも、IKEAや無印良品、ユニクロやH&Mなど、安価でデザイン性に優れたものを選択する。プレッシャー世代にとって、高価であることに特別な価値はないのだ。

「安価を好む傾向はプレッシャー世代が育ってきた経済環境とも関係しています。デフレ下で育ったプレッシャー世代は、それまでのインフレ時代とは違い、購入を先延ばしにした方が安価になるという経験を何度もしています。クルマや家電などは、量産されるほどひとつあたりのコストは安くなり、1年で価格が20~50%下がることは珍しくありません」

インフレ世代は、購入を先延ばしにすればするほど物価が上昇し、損をする経験を持っている。けれど、デフレを経験してきたプレッシャー世代にとっては、物価の下落傾向と量産効果によって「安くなるのを待つ」ことが賢明な選択なのだ。

新商品に飛びつかないプレッシャー世代は、ものづくり企業や流通・サービス業などの売り手にとっては難しい消費者と言えるかもしれない。しかし、そんな彼らの消費意欲を引き出すことに成功した業界がある。コンビニ業界だ。

「コンビニ業界はデフレ下で成長を続けています。成功のカギはプレッシャー世代に多い『ひとり家族』が増えたことです。夜遅くまで働いて、帰宅するのはスーパーが閉まる頃――そんな買い物が夜型になりがちな彼らをターゲットに、日常食品や生鮮食料品、日用雑貨など、日常生活に必要な商品の取り扱いを増やしました。また、価格を下げることよりも、日常生活の質を高める『プチ贅沢』を意識していることも特徴です。この好例が、最近のトレンドであるコンビニスイーツと言えるでしょう」

コンビニのほかにも、飲食店の女子会プランや友達へのプレゼントなどは、「日常生活(Daily Life)」消費と「つながり(Connection)」消費を兼ねる商品サービスとして好調だ。つまり、プレッシャー世代の価値観にマッチした商品サービスを提供することができれば、価格が多少高くても需要が見込める。

プレッシャー世代が消費に意欲的ではないように見えるのは、これまでの世代とは異なる価値観を持っていることが背景にある、と言えそうだ。