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今回の展示の大きなテーマは「ゴミ」。これまでも渋谷の街にいるネズミを捕まえてピカチュウを模した剥製にしたり、渋谷の空にカラスを大量発生させるパフォーマンスを行うなど、渋谷という街をモチーフにした作品を発表してきたChim↑Pom。今回の「ゴミ」というテーマも、それらと地続きになっている。
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岡田 「資本主義社会では生産、消費、廃棄っていうサイクルの中で大量のゴミが出るのは宿命なので、今回パルコという商業施設で展覧会をするにあたって、重要なモチーフのひとつとしてゴミを扱っています」

稲岡 「昔に比べて渋谷も含めて本当に街がキレイになってるよね。街にとって汚い物が、ゴミだけに限らずどんどん見えないようになってきてる。変わらずあるはずなのに、目にはつかない」

岡田 「前にも渋谷のネズミを捕まえたりとか、カラスを集めたりしてて、ゴミもそれらと同じ目線に常にあって気になってはいたんですが、これまで日本ではあまり扱ったことのないモチーフでしたね。会田さんの作品にも人間がゴミになったやつありますよね?(『灰色の山』。大量のサラリーマンの死体が積み上げられた山を描いた作品)あれなんか、僕らが今回出品している巨大ゴミ袋と地続きですよね。最終的な処分場の風景があの作品に描かれてるみたいな」

会田 「ゴミとウンコはだいたい同じことで、活動すれば出るもので、否定してもしょうがない。例えばロハスみたいな人たちが「ゴミをなるべく出さないようにしよう」とか言うけど、Chim↑Pomは大都会でゴミが出ちゃったり、ネズミやカラスが大量発生することを否定するんじゃなくて……」

岡田 「ネズミやカラスもそうですけど、出来れば見えなくていい、消えて無くなって欲しいみたいなものみたいになってますけど、無視できないですよね。野生に生きるというよりかは、どっちかっていうと人間社会の一員みたいな存在ですし。アイツらの一番のごちそうはゴミみたいな。結果人間が餌付けしてるじゃんっていう」

会田 誠 《灰色の山》 2009-11年 アクリル絵具、キャンバス 300×700 cm タグチ・アートコレクション蔵 制作協力:渡辺 篤 Courtesy: Mizuma Art Gallery
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会田 「だからアイロニーと言うか、好きで嫌いと言うか、賛成で反対と言うか。僕もだいたいの作品のモチーフに対する態度はそういうことで、“ゴミ反対”とかひとことで言えたら、あまり作品にすることがない。モヤモヤとしたどうしようもない、避けがたい状況への認識……みたいなことだよね」

岡田 「はい。でもあんまりそこまで難しい話にはしたくないですね。僕らがやるからには、やっぱりそういったモチーフでも面白くしたい。だから今回、ゴミ袋に単に入るだけじゃなく中では楽しく遊んでもらおうと」

稲岡 「消費のサイクルで、パルコみたいな商業施設はわかりやすく消費を刺激していく先端にあるじゃないですか。そんな場所の真正面に置かれた巨大ゴミ袋に、みんな列をつくって夢中になって入っていく。中に入ると、大人になってるからこそもう入ることがないバルーンが本当に楽しい、でもゴミの気分、みたいな。そこを感じてくれたら嬉しいけど、みんな感じてくれてるかな(笑)?」

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今回の『Chim↑Pom展』の大きなトピックと言えば、やはり「あのアート界の問題児Chim↑Pomがパルコに登場する!」というインパクト。ただ、<パルコ>というキーワードに対する印象や認識は、世代によって大きく異なるようだ。
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岡田 「今回の展示は悩んだ部分も結構ありましたね。渋谷って街自体が巨大なエンタテインメント施設みたいじゃないですか。渋谷駅降りたらすぐエレクトリカルパレードみたいな。そんな立地にあるパルコでやるからには、こちらも出来るだけスケールのデカいところで対抗してやろうと思いましたし」

稲岡 「最初は、パルコミュージアムをメインにしつつ、ミュージアム以外も使ってなにかやりませんか、っていう話をパルコから言ってくれて、じゃあなにをやろうかっていろいろメンバーとアイデアを出して。元々僕たちが渋谷で作品を作ることが多かったから、“渋谷のパルコ”でやることは僕たち自身にとっても大きな意味があったし、ある意味勝手にやってた僕たちが、渋谷の景色にも影響力のあるパルコっていう場所でどういうことが出来るのか、楽しみでもあったよね。パルコも凄い前向きだったから色々無茶な提案とかもしつつ、今回そのアイデアスケッチも展示してますが、ほんの一部ですし」

岡田 「実現してないやつも多いしね。と言うか、今回はパルコサイドと打ち合わせしていく段階でどこまでお互いのポテンシャルを引き出していかに最高のものを作っていくかっていうその過程自体も重要でしたね。僕らが勝手にギリギリのことしようとすれば出来なくもないんですが、それだともう1アーティストの作品でしかなく、広がりもないですしね。まあ、でも今回はこれまでの美術館に比べたら、よく実現できたなっていうのが多いですね」

会田 「美術館は法律的な縛りもあるので、アイデアを断る美術館側が一概に石頭というわけではないと思いますが、今回はパルコの柔軟性がかなりあったと見るべきでしょうね。“PARCO”の看板を外すことも、俺たちや三潴さん(三潴末雄。ミヅマアートギャラリー代表)の世代があれを見て感じることはいろいろあると思うよ。特に三潴さんの世代なんかは、自分の青春がレイプされるように感じていると思う」

岡田 「確かに僕らと会田さんたちでは感覚が違うとは思うけど、そこまで(笑)!」