さて、盛り上がってる2011年の「プロ野球日本シリーズ」ですが、
残念ながら野球はオフシーズンへと突入。全国のプロ野球ファンたちにとっては、さびしいシーズンの到来ではあるものの、

ここでひとつ、ご提案を。

それは、明日からは“リーデイング・ベースボール”のススめ、というご提案である。
野球本と言えば、ジャンルで分けても小説、ノンフィクション、技術書と(中にはアイドル本、写真集も)多岐に及び、テーマで分けても、お気に入りのチーム、選手にまつわるモノもあれば、野球そのもの歴史、あるいは技術、ゲームの奥深さを追ったものまでと、バリエーションは様々。

さすが、日米ともに長い長い歴史を重ねてきた“キング・オブ・スポーツ”の成せる業である。

   

 


夏の若者たち 青春篇
ロジャー・カーン著/佐山和夫訳
ベースボールマガジン社






なんと言ってもおススめは『夏の若者たち』。原題は“BOYS OF SUMMER”である
この作品は、全米でもっと著名なスポーツ作家、ロジャー・カーンが、
1972年に著したアメリカ野球文学の最高傑作である。
1950年代に黄金時代を築いたブルックリン・ドジャースの中心的メンバーである、
ジャッキー・ロビンソンをはじめとする黄金のプレイヤーたちとの交流を、カーンが綿密な取材とあふれんばかりのドジャースへの愛で綴られたこの作品は、優れた文学であり、同時に鋭いノンフイクションでもあり、記録的文献とも言えよう。
野球ファンならば必読の書である。
 

 


ひと夏の冒険
ロジャー・カーン著/小林信也訳
東京書籍







カーンのこれまた傑作をもうひとつ。
1983年、カーンはなんと、自らマイナーの弱小チームのオーナーに就任。
おちこぼれ揃いの弱小ビンボー球団を率いることになった、カーンのおかしくも素晴らしき野球三昧の一年間が綴られていく。
カーンの悪戦苦闘のエピソードの面白さはもちろんだが、球団経営のノウハウ、マイナーリーグの実態が、克明に描かれている部分もこの作品の面白さのひとつである。

   

 




監督
海老沢泰久著 
文春文庫








舞台は1978年のセントラル・リーグに所属するエンゼルスなるチーム……
と聞けば、野球小説ということになるのだが、これは実録小説である。
なぜならば、エンゼルスの監督は広岡達朗、そうあの広岡達朗なのである。
つまりこれは、1978年、デッドヒートを繰り広げた広岡ヤクルトと長嶋巨人をモチーフに、
かつて優秀すぎるがゆえに、栄光の巨人軍を追われた孤高の指揮官・広岡の生き様を
フィクションの体で描いたものなのだ。

ゆえに当時の巨人軍の体質、エンゼルスを装わせたヤクルトというチームの内情、そして当時の広岡に対する周囲の評価をあからさまに描かれていく。
そのせいもあって、当時かなり話題を呼んだ作品である。

海老沢作品では、広岡達朗と江夏豊という、ふたりの勝負の鬼が火花を散らした『ふたりのプロフェッショナル』もあわせてどうぞ。

   




ふたりのプロフェッショナル

海老沢泰久著 
ランダムハウス講談社文庫