ネットでは72%が最低評価をつけるところも

一方で、そんな作品づくりに対する批判も多かった。たとえば、Yahoo!テレビの「みんなの感想」には、ドラマ終了時点で4万4千件を超える投稿が寄せられ、そのうちの72%が最低評価の★1つをつけている。こうしたネットの意見は批判の声のほうが強く出るものなので、もちろん視聴者の大半がつまらないと思いながら見ていたわけではないと思う。

ただ、熱心に批判を書き込むアンチファンが多かったのも事実だった。そんな人たちからすれば、ヒロイン・梅子のキャラクターは、むしろ許せないものだった。大学教授の家に生まれ、たいした努力もせずに医者になり、あげくのはてに実家を担保にお金を借り、ちゃっかり開業までしてしまう。結婚しても食事は姑が作ってくれて、子供の面倒も見てくれる。そんなに日本の戦後はラクだったのかと……。要するに、ヒロインの明るさやおだやかさ、作品全体のほのぼのとした雰囲気は、見る人によっては、単にイライラする要因になってしまったということだ。

『梅ちゃん先生』オリジナル・サウンドトラック2 Amazon

医専時代の献体を扱うシーンや、山口判事の餓死を取り上げたシーンに関しても批判は多かった。献体シーンというのは、第6週で梅子が献体に驚く場面をマンガチックに演出した部分のことで、山口判事のシーンというのは、第7週で建造が配給の食料以外は口にしないと宣言する一節で、元東京区裁判所の山口良忠判事が亡くなったこと(実話)を話題のひとつとして挿入した部分だ。

どちらも批判の主旨としては、ヒロインが医師を目指す内容なのに、あまりにも命を軽く扱い過ぎてはいないか、というもの。作品のテイストを考えれば、この部分の描写が明らかに不謹慎だったとは思わないが、これもドラマ全体の雰囲気が裏目に出た感じだった。

ヒロインのキャラクターに好き嫌いはあるにしても、医療を扱った部分に関しては、確かに中途半端なところが多かった。ていうか、結果的にこのドラマのヒロインが医師である必然性はほとんどない内容だったので、せめてヒロインの職業を別のものにすれば、こんなにも批判は多くなかったのではないかと想像する。

『梅ちゃん先生』が好きだった人たちも、別に梅子が町のお医者さんだった部分にハマっていたわけではないと思う。おそらくハマったのは、梅子や梅子の家族、梅子の友人たち、地域の人々のキャラクターであり、その人たちが素直に笑ったり泣いたりする姿だ。作品にメッセージがまったくなかったとは言わないが、そうした堅苦しさよりも、登場人物たちの真っ直ぐな明るさがのほうが、見る者の心を動かした。そういうことなんだと思う。だから余計に、その良さを素直に受け取れる時代背景や設定でもよかったのではないかという気がする。