ミュージカル「しゃばけ」弐~空のビードロ・畳紙~ゲネプロより 撮影:鏡田 伸幸 ミュージカル「しゃばけ」弐~空のビードロ・畳紙~ゲネプロより 撮影:鏡田 伸幸

畠中恵のファンタジー時代小説が原作のミュージカル「『しゃばけ』弐 ~空のビードロ・畳紙~」が9月2日に開幕。それに先がけ公開ゲネプロが行われた。

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脚本を神楽澤小虎(MAG.net)、演出・音楽を浅井さやか(One on One)が手がけるミュージカル「しゃばけ」シリーズの第2弾となる今作。平野良と藤原祐規のW主演で、各キャラクターごとにフィーチャーした「空のビードロ」(『ぬしさまへ』所収)と「畳紙」(『おまけのこ』所収)のふたつの物語が描かれる。シリーズの主人公・一太郎は、第1弾(今年1月上演)で演じた植田圭輔が声で出演する。

妖(あやかし)と人間が共存するファンタジーの世界で、だからこそ際立つ人間たちの複雑さが温かな視点で描かれる本作。そのひとつひとつを表現していくのが、浅井のつくりあげたバラエティ豊かな楽曲の数々だ。今作では特に登場人物の“孤独”や“寂しさ”が描かれており、その繊細な感情とそれを包み込む温かな空気を、ときにバラードで、ときにポップな曲&ダンスで、彩り豊かに描いてみせた。

その中でも、平野演じる一太郎の腹違いの兄・松之助が中心となる「空のビードロ」で、口数の少ない松之助が言葉に出せない想いを歌い上げる切ないソロ曲や、奉公人たちが賑やかに歌い踊る曲が印象的。そして、藤原演じる付喪神・屏風のぞきが中心となる「畳紙」では、口は悪いがやさしい屏風のぞきと、その屏風のぞきにだけは素直になれるお雛(岡村さやか)の、気持ちが通じ合っているからこそ生まれる美しいハーモニーが見どころのひとつだ。

ゲネプロ後の会見で平野は「時代は違えど人の心にある悩みだったり苦悩だったり、押し込められている感情だったりが題材になっていて。観終わったあとにスッキリと晴れやかな気持ちになれるような作品になっていると思います。たくさんの方に観ていただきたいですし、観た方の世界が変わるような作品だと思っています」。第1弾から屏風のぞき役を演じる藤原は「前作ではひたすら僕の思う屏風のぞきの可愛らしさを追求しました。今作は、この綺麗で素敵なお話をお客様にお届けできるよう、千秋楽までより良いものを目指してがんばっていきたいです」

また、今作から参加する石井智也は「父親が劇団に所属していて、この紀伊國屋ホールは僕が幼少期から他の役者さんに遊んでもらったりしていた場所でした。やっと今日、僕は父親や憧れの先輩方と同じ景色が見られるんだなと思うと本当にうれしくて感無量です」と感慨深い様子だった。

公演は9月10日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて。

取材・文/中川實穗
挿絵:柴田ゆう (C)2001 畠中恵/新潮社 (C)2017 CLIE