(画像左から)河原雅彦、後藤ひろひと (画像左から)河原雅彦、後藤ひろひと

実に14年ぶりの上演とあって期待が高まっている舞台『人間風車』。その作者である後藤ひろひとと、今回の演出を担う河原雅彦が顔を揃えた。売れない童話作家が紡ぎ出すおかしな童話が恐ろしい出来事に展開していくという、笑って笑ってやがて恐怖におののくあの世界は、今回新たにどう立ち上がるのか。創作するふたりの頭の中を覗いた。

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この度の新たな上演にあたっては、後藤と河原が互いに目指したものがある。それは、「最初にこの戯曲を書いたときに、一旦、立ち戻る」(後藤)ということだ。後藤が劇団「遊気舎」に書き下ろして上演されたのが1997年。それから20年の間に何度も上演され、2000年、2003年のG2演出版では、2003年に河原も出演した。「そのとき噂で聞いたんです。最初に遊気舎で上演されたものは、もっと無茶苦茶でとんがってたらしいと(笑)。もちろんあのときG2さんが作られた、笑って怖くて感動するという手触りも、キャッチーだしいいと思うんです。ただ、僕としては、ファンタジーを扱う題材なだけに、綺麗事では済まされない生々しさを前に出したくなるというか。そこで、もともとはどういったものだったんですかと後藤さんにお聞きするところから、今回の作品づくりが始まっていったんです」(河原)。その河原の反応は後藤にとっても非常に嬉しいものだったらしい。「リーダー(河原)と俺は、演劇界のパンクなところから出てきたという共通項があるからか、オリジナルのそのヒリヒリする部分をすごくわかってくれた。だったら元に戻さないと一生後悔すると思って。最初の一文字目から書き直したんです」(後藤)。

そうして今出来上がろうとしているのは、主人公である童話作家が、自分の童話が起こす罪とどう向き合うべきかを問いかけるような話。「今の犯罪を見ていると、自分が犯したことへの責任とか償いということをもっと考えないといけないなと思ったりするんです。だから、お客さんもどんどん共犯者に引きずり込んで、観終わったあとにいろいろ話してもらえたらと思っています」(後藤)。とはいえ、「7割はコメディーです」と断言する後藤。河原も、「ホラーって油断させてなんぼですから(笑)、入口は愉快な童話がある楽しいエンターテインメントで、急転直下、どうにもやるせない恐怖に持っていければ」と目論む。

舞台美術なども「14年前とはガラリと変えるつもり」だと河原。そこにはより恐怖を高める工夫があるはずだ。その戦慄は、ほかにはない演劇体験になる。

舞台『人間風車』は9月28日(木)から10月9日(月・祝)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて上演。その後、各地を周る。チケットは発売中。

取材・文:大内弓子