日本から来た超特急ケンジの声を演じた賀来賢人

 「きかんしゃトーマス」シリーズの劇場版最新作『映画 きかんしゃトーマス おいでよ!未来の発明ショー!』が、3月26日から公開される。今回は、未来の発明ショーのため、見たこともない発明品の数々や発明家たちがソドー島に大集合する。本作が初登場となる、日本からやってきた超特急ケンジの声を俳優の賀来賢人が演じた。「子どもの頃、トーマスが大好きだった」という賀来に、本作への思いや、2児の父親として大切にしていることなどを聞いた。

-オファーがあったときの心境を教えてください。

 小さい頃に見ていた作品なので、うれしかったです。オファーを頂く1週間前に、ちょうど僕の子どもと動画配信サービスで『きかんしゃトーマス』を見ていたんです。うちの兄の子どももトーマス・ブーム中で、実家に人形が置いてあるぐらい。これも何かの縁だなと思い、「ぜひやらせてください」となりました。

-演じる上で、苦労した点は?

 ケンジは、好青年で嫌味のない男なんです。振り切った役ならやりやすかったかもしれませんが、そこまで奇をてらったキャラクターでもないし、声優の経験も少ないので難しかったです。監督に「真っすぐな男というのが声で伝わるように演じてほしい」と言われたので、何回か試してみて、「これでいきましょうか」という感じでやっていきました。

-以前、「自分は眉毛がケンジと似ている」と話していましたが、内面で似ている部分はありますか?

 内面で似ている部分はなかったので、ケンジがうらやましかったです。「こんないい男になりたかったな」と。でもそういう完璧で非の打ちどころがない男が、いろんなことに巻き込まれていく様子って、結構面白いと思うんです。それが今回の映画の見どころの一つでもあると思うので、ケンジが止まらなくなって叫ぶシーンでは、思いっ切り情けない感じでやらせてもらいました(笑)。

-演技の完成度はどのぐらいだと思いますか。

 自分では分からないです。まだ全然足りていないと思います。自分の声って正直すごく気持ち悪いんです。この業界に入って一番「気持ち悪っ!」って思ったのは、自分の顔でも動きでもなく、声でした。収録したものを聞いてみると、「これケンジじゃなくて、僕だけど大丈夫ですか?」という感じで、すごく変な気分でした。

-劇中には、トーマスたちが「僕たちに代わりはいないということを証明しなきゃ」と奮闘するシーンが出てきます。賀来さんにとって「ここは負けないぞ」という強みは何ですか。

 無根拠な自信です。大きな挑戦や勝負事があると、「絶対できる」とマインドコントロールをするのですが、そういうときの自分は強いのかな…。それはお芝居だけじゃなく、何に対しても。結構勝負事が好きなんです。そういうときの方が割といいパフォーマンスができる気がします。ネガティブにもなることもありますが、言霊というか、大きなことを言っちゃえば、達成せざるを得ない。そういう手を使って、自分を奮い立たせることがよくあります。

-映画は家族でご覧になりましたか。

 見ました。子どもは普通に作品として楽しんでいたので、何よりです。終わった後に、ケンジの声を演じたことを伝えましたが、言わなければ、多分気付かなかったと思います。

-お子さんは、お父さんの仕事が俳優だと理解していますか。

 何回も言っているのですが、よく分かっていないんですよね(笑)。俳優という言い方はしていなくて、「保育園でよく何とかごっこをするでしょ? その何とかごっこをして、お金をもらう仕事だよ」と話しています。

-これまでの出演作品はまだ見せていないのですか。

 CMなどが勝手に流れるので、そのときは「パパだ」と言うのですが、まだ理解はしてないと思います。「テレビに出る人だ」というのは分かっているのですが、自分も当たり前のようにいつかテレビに出るものだと思っています。テレビが特別なものではなくて、いずれ「みんなが出られるもの」だと(笑)。

-お子さんには、どんな人になってほしいですか。

 周りを明るくさせるような人になってほしいです。別にそれは仕事で…ということではなくて、明るい存在であってほしいなと思います。あとは、本人が楽しければいいのかなと。明るくのびのび育ってもらえたら何でもいいです。

-お子さんから「パパ駄目だよ」と怒られることは?

 子どもから「パパ声大きい!」と怒られます。口達者で、かわいいです。小さい大人みたいです。

-改めて「きかんしゃトーマス」の魅力とは?

 個性豊かなキャラクターがいっぱいいて、みんなバラバラなんですが、支え合ったり協力し合ったりする。「仲間」という普遍的なテーマを、押し付けがましくなく、やんわりと伝えているところがすてきだなと思います。僕も、劇場で公開されたら、家族みんなで見に行こうと話しています。

(取材・文・写真/山中京子)