YU-KI『NEXT LEVEL』(『仮面ライダーカブト』OP)

自身が手掛ける作品のコンセプトやストーリーを深く理解し、そこからリリックを生み出す語彙力の豊富さと先見的な目線を持つ藤林さん。

図らずしも、楽曲を使用した作品のストーリーが藤林さんが書いた歌詞の通りに進むことすらあり、これまでにも度々、ファンを驚かせてきました。

そんな藤林さんに対して、尊敬と驚愕の思いを込めてファンが付けた渾名は「預言者」。藤林さんの預言的な作詞能力は、平成仮面ライダーシリーズにおいて度々、顔を出します。

例えば、平成ライダーシリーズ第7作目として放映された『仮面ライダーカブト』のオープニング主題歌『NEXT LEVEL』などは、"預言者"たる藤林さんの才気が発揮された楽曲といえるでしょう。

TRFのヴォーカリストであるYU-KIさんが、性急かつハードなテクノサウンドに乗せて闘いに挑むヒーローの姿を歌い上げる正統派のヒーローソングなのですが、テレビシリーズの最終回(と、本作の映画版である『劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE』)を観た後に聴き返すと、歌詞の内容が……特に、2番以降に綴られる言葉が作品の終盤における展開を物の見事に言い当てていることに気付かされます。

こうした予見的な歌詞を書くことができるのも、作品を深く理解し、その物語に入り込むことができる故なのでしょう。

藤林さんの預言は、単なる偶然ではなく、作詞家として真摯に作品に向かい合うからこそできる必然的な奇跡なのです。

AAA DEN-O form『Climax Jump』(『仮面ライダー電王』OP)

平成ライダーシリーズで、数多くの主題歌を手掛け、幾多の名曲を生み出してきた藤林さん。その中から「ベスト」を選ぶとなると、ファンの好みや作品に対する思い入れから、その票は大きく分かれることになるでしょう。

しかしながら、この『Climax Jump』は、多くのファンにとって特別な1曲であり続ける……まさに、歴代シリーズを代表する「名曲中の名曲」なナンバーではないかと思います。

本曲は、人気男性声優が多数出演したことで、メインターゲットの児童層や男性特撮ファンだけでなく、女性ファンからも高い支持を得た人気作『仮面ライダー電王』の主題歌で、ファンからも長く愛される楽曲です。

オリジナルアーティストのAAAのバージョンは勿論のこと、主演の佐藤健さんや出演声優陣によるカヴァーバージョンやアレンジ版など複数形態でリリースされ、ファンの耳を大いに楽しませてくれました。

AAAの歌声とメロディが素晴らしいのは勿論のこと、この曲を何よりも印象的なものに仕上げているのが、曲間で度々リフレインされる「○○じゃん?!」という超キャッチーなフレーズでしょう。

歌詞世界をより取っ付き易く、子どもたちからも愛されるものになるように、特撮ソングの歌詞世界ではフランクな話し言葉や若者言葉を頻繁に取り入れる藤林さんですが、そのポップな感性をフルに感じられる名フレーズだといえるでしょう。

幡野智宏(Project.R)『LUCKYSTAR』(『宇宙戦隊キュウレンジャー』OP)

東映の特撮ヒーロードラマでは、スーパー戦隊シリーズでも数多くの"作品"を残している藤林さん。手掛けた楽曲は、主題歌、挿入歌、キャラソン……と多岐にわたりますが、その最新作となる楽曲が、現在好評放送中のシリーズ最新作『宇宙戦隊キュウレンジャー』のオープニング主題歌『LUCKYSTAR』です。

様々な新要素を盛り込んだ意欲作に相応しい『キュウレンジャー』の主題歌らしく、ここにもある"仕掛け"が。実は、この曲、これまでの主題歌における恒例であった「タイトルや歌詞に戦隊ヒーローの名前を盛り込む」という"お約束"を敢えてオミットした楽曲なのです。

「キュウレンジャー」というキーワードは、コーラス部分で出てくるのみ。これまでのフォーマットに縛られない自由度の高い楽曲といえます。

だからこそ、その歌と音楽の中で、藤林さんのリリックは一層の躍動感を放っているように思います。

歌詞の内容は、本作の主人公であるラッキー(シシレッド)の「超ポジティヴで、何事にも前向きな性格で幸運を引き寄せる」というキャラクター性を踏まえた、聴いているだけで元気が出てくる陽性の楽曲となっています。

一方で、子どもたちだけでなく、幅広い層にとって胸に響くメッセージ性を持つ言葉が顔を出すのもこの曲の凄いところ。

壮大なスケール感を聴く者に抱かせるエモーショナルなメロディと、幡野智宏さんの爽やかな歌声も含めて、異色ながらもスーパー戦隊の正道を征く真っ直ぐなヒーロー賛歌です。