サイキックラバー『侍戦隊シンケンジャー』(『侍戦隊シンケンジャー』OP)

続けて、スーパー戦隊シリーズから、もう1曲。『侍戦隊シンケンジャー』は、藤林さんによる特撮ヒーローソングの中でも、とりわけリズミカルな言葉の使い方が楽しいナンバーです。

スキャット的に用いられる「チャンバラ」というリズミカルなフレーズや、韻を踏むことを強く意識した言葉の展開は、この曲に特別なグルーヴ感を与えています。

藤林さんの歌詞は、作品の世界観やキャラクター性を重視する為、物語性が強いのも作風における大きな特徴となっているのですが、この曲の場合は、そこに"リズム"という音楽要素が色濃く出ており、他の藤林さん作詞のアニソンや特撮ソングとは、また少しばかり異なる魅力を持つ1曲となっています。

サイキックラバーによる明るく、そして、ロックなサウンドもカッコ良く、歴代戦隊の中でもファンからの評価が高いそのドラマ性と共に、観る者のテンションを大いに上げてくれました。

BRILLIANT4『エレメンタリオで会いましょう!』(『甘城ブリリアントパーク』ED)

藤林さんが作詞家として作品をバックアップしたアニメといえば、京都アニメーションが2014年に制作した『甘城ブリリアントパーク』です。

魔法の王国「メープルランド」の住人が運営する潰れかけのテーマパーク「甘城ブリリアントパーク」を立て直す為に登場人物たちが奮闘する「ファンタジー+経営モノ」なライトノベル作品のアニメ化で、藤林さんは、関連楽曲に数多くの歌詞を提供。

中でも、オープニング主題歌とエンディング主題歌は、どちらもその音楽性を含めて素晴らしいナンバーとなっています。

AKINO with bless4が歌う『エクストラ・マジック・アワー』の歌詞世界も捨て難いのですが、ここでは、エンディング主題歌として使用された『エレメンタリオで会いましょう!』をご紹介させていただきます。

劇中に登場する水・風・土・火の妖精によるユニット「BRILLIANT4」によるナンバーで、各キャラクターを演じた女性声優(相坂優歌さん、黒沢ともよさん、三上枝織さん、津田美波さん)がキャラ名義で歌唱を担当。

4人のコーラスが素晴らしく、"声優アイドルソング"としても高い完成度を誇る1曲なのですが、そこに更なる力強さを与えているのは、藤林さんのペンによるリリックに他なりません。

"妖精"というキャラクターに寄り添ったファンタジックな歌詞は本曲の多幸感をより一層盛り上げており、愛らしくも独自の世界観を築き上げています。4人の妖精が持つ自然のモチーフを極々ナチュラルに歌詞の中に盛り込む技量にも驚かされます。

同じく歌詞の中でファンタジーの要素を聴かせてくれた『仮面ライダーウィザード』の主題歌『Life is SHOW TIME』(鬼龍院翔 from ゴールデンボンバー)と聴き比べてみるのもおもしろいと思います。藤林さんのファンタジー世界を描く、その筆致にも要注目です!

Luce Twinkle Wink☆『1st Love Story』(『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』OP)

特撮ファン的には、やはり"ヒーローソング"の印象が強い藤林聖子さんですが、そのペンからは、数多くの優れた"ラブソング"も生み出されています。

この『1st Love Story』は、藤林さんの情景描写と心理描写の巧みさが、リスナーに強いインパクトを残す秀逸な恋の歌です。

女の子の一人称視点から、恋人との幸せな日々を描く内容で、サビのパートにおける恋の高揚感を描き出すパンチラインとキラーなフレーズの連続には、ラブソングとしての特別なパワーが宿っています。恋人と同じ時間を過ごすことで、平凡な日々や日常風景が特別な輝きを放つものになる。その瞬間のエモーションがここでは見事に描かれているのです。

一方で、2番のAパートでは、携帯メールやデジタルのメッセージならば好きな気持ちを相手にストレートに伝えられるにも関わらず、いざ面と向かってでは、自身の恋心を上手く言葉にできないという描写で、奥ゆかしい乙女心を描き出すと同時に、メールやSNS世代特有の若い感性を的確に描き出す。その巧みな描写に、思わず感動してしまいます。

そんなリリックが、Luce Twinkle Wink☆の全力な歌とパフォーマンスで歌い上げられるのですから、その幸福感たるや……。アイドルへの歌詞提供も多い藤崎さんですが、その中でも特にオススメできる1曲です。