マイウェイ 12,000キロの真実に出演した山本太郎

第二次世界大戦末期に、日本、ソ連、ドイツと3つの軍服を着て戦うことになった東洋人の姿を、実話を基にして描く『マイウェイ 12,000キロの真実』。『シュリ』『ブラザーフッド』などで知られるカン・ジェギュ監督の最新作に、凶暴な曹長役で出演している山本太郎に話を聞いた。

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山本は朴訥とした日本兵と凶暴な日本兵の両方を演じたオーディションで役をつかんだが、「戦争映画の中でわかりやすいアイコンになってしまう役柄を演じることに、当初は戸惑いを感じていた」という。「以前、大虐殺を題材にした中国映画のオーディションのあとに監督に意見を求められ、“日本兵を鬼のように描こうとする気持ちはわかるけれど、その中にも中国人に手を差し伸べた日本人がいたはずだ。反日映画を作りたいなら都合よく編集したドキュメンタリーでいいのでは?”と正直に言ったら、落とされたことがあったんですよ。今回もそういう理由でただひたすら凶暴なだけの日本兵を演じることに抵抗があったんです」

思い悩んだ山本は、壮大な物語の中で「主役でもないキャラクターのバックグラウンドを描くことの難しさは承知の上」で、監督との溝を埋めていくための話し合いを重ね、野田という役を作り上げていった。その過程で見えてきたのは、日本人、韓国人、ドイツ人といった人種の違いを超えて“人間の本質”を描くことへの監督のこだわりだった。「だから僕自身も、日本兵の描き方や扱いがどうのこうのではなく、野田というひとりの人間をしっかり演じきろうという考えに行き着いたんです」

東日本大震災をきっかけに、山本は反原発を訴えて精力的に走り回る日々を送っている。政府の方針に反旗を翻す活動家としての顔も持つ彼の目に、日本兵として戦った野田はどのように映ったのだろうか。「野田は権力があると思えば弱者にひどい扱いをして、立場が逆転すれば手のひらを返す。僕の生き方とは真逆に見えるかもしれませんが、でも野田は決して国粋主義者ではなかったと思うんです。とにかく生きていくために必死だったという部分を見せたいと思いながら演じていましたね」

韓国映画史上最高額の製作費を投じてリアリティを求めた撮影は、「火炎瓶も本物だし、火薬を大量に使うし、そりゃ迫力ある映像が撮れるだろ!という大変な毎日だった」という。チャン・ドンゴンと共に主演を務めたオダギリジョーとは、ドラマ『新選組!』などで共演した仲だけに「自分の撮影が先に終わって、オダギリ君をさらに3ヵ月も現場に残すのはかわいそうだな、ギャラが出れば一緒にいてあげたいと思ってました」と笑う。韓国人スタッフとの仕事を「テンションが上がって言い合いになっても、あとはあっさりしている。自分とすごく合っている現場でしたね」と振り返り、「久々に“映画をやっているな”という手応えを感じた」と語る本作の完成を楽しみに待ちたい。

取材・文:細谷美香

『マイウェイ 12,000キロの真実』
2012年1月14日(土)全国ロードショー