『サンソン―ルイ16世の首を刎ねた男―』より

4月23日に開幕した、稲垣吾郎の主演作『サンソン ─ルイ16世の首を刎ねた男─』。初日前に行われた本作のゲネプロを鑑賞した。

18世紀末、フランス革命期に実在した死刑執行人シャルル=アンリ・サンソンの葛藤を、フランス文学者・安達正勝の原作をもとに描いた本作。

演出の白井晃、脚本の中島かずき(劇団☆新感線)、音楽の三宅純は、稲垣がベートーヴェン役で主演し、3度の上演を果たした『No.9 ─不滅の旋律─』でもタッグを組んでいる。

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稲垣吾郎演じる死刑執行人・シャルルの葛藤

物語の始まりは1766年、パリの高等法院法廷。

世間から忌み嫌われる死刑執行人と知らずに食事を取ったとして市民から訴えられたシャルル(稲垣)は、自身が就いている職務の意義を高らかに説いて裁判に勝利する。

弁護人もつかずひとりで立ち向かった息子のもたらした結果に、かつて同じ仕事をしていた父バチスト(榎木孝明)も満足顔だ。

やがてルイ16世(中村橋之助)の即位によってフランスは大きく揺れ始める。

凶作による飢饉で生活苦にあえぐ庶民は、豪華絢爛な暮らしを謳歌する宮廷や貴族への不満を募らせていく。

その鬱憤を晴らす日々の娯楽として台頭したのが罪人の処刑見物。

そこに、蹄鉄工の息子ジャン=ルイ・ルシャール(牧島輝)による父親殺し事件が起こって……。

国の裁きの代行者として“ムッシュー・ド・パリ”と呼ばれ、誇りを胸に職務をまっとうしてきたシャルル。

熱心なカトリック教徒にして死刑廃止論者でもあった彼は、罪を裁く己の職務と処刑が持つ残虐性の間で引き裂かれ、苦しんでいく──。

『サンソン―ルイ16世の首を刎ねた男―』より

稲垣はこの葛藤を、冷静に努めた演技の中ににじませる。

ヒステリックに激情をほとばしらせた『No.9』のベートーヴェンとは正反対の、新たな一面に注目だ。

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